
営業の型化とは?属人化を防ぎ、成果を再現する営業プロセス設計の全手法
はじめに|「営業の成果が人に依存してしまう」課題をどう乗り越えるか
「トップ営業が抜けると数字が落ちる」「新人がなかなか立ち上がらない」「商談の進め方が人によってバラバラ」――こうした悩みは、多くのBtoB企業が抱える共通課題です。
その根本原因の多くは、営業活動が“属人化”しており、再現性のある仕組みとして設計されていないことにあります。
この課題を解決する考え方が「営業の型化」です。営業の型化とは、単なるマニュアル作成やスクリプト整備ではありません。
成果を出している営業活動を分解・言語化し、誰が実行しても一定水準以上の成果が出る状態をつくること。インサイドセールスからフィールドセールス、クロージングまでを含む営業プロセス全体の再設計が求められます。
本記事では、営業の型化を「なぜ必要か」「どう進めるか」「どこで失敗しやすいか」を体系的に解説しつつ、実際の支援事例やセールスイネーブルメントの考え方も交えながら、明日から実践できるレベルまで落とし込みます。
目次[非表示]
- 1.はじめに|「営業の成果が人に依存してしまう」課題をどう乗り越えるか
- 2.営業の型化とは?属人化を防ぐための定義と誤解されがちなポイント
- 3.なぜ今、営業の型化が求められているのか|BtoB営業を取り巻く環境変化
- 3.1.① 商談の高度化・複雑化
- 3.2.② 人材流動性の高まり
- 3.3.③ インサイドセールスと分業化の進展
- 4.営業の型化で設計すべき3つのレイヤー|プロセス・行動・思考
- 4.1.① プロセスの型(WHAT)
- 4.2.② 行動の型(HOW)
- 4.3.③ 思考の型(WHY)
- 5.営業の型化を進める実践ステップ|設計から定着までの流れ
- 6.よくある失敗パターン|なぜ営業の型化は失敗しやすいのか
- 7.事例に学ぶ|営業の型化が機能したケース
- 7.1.事例① 株式会社ピーアール・デイリー様 ― 型化 × 育成で“成果直結の営業”へ
- 7.2.事例② 株式会社グロップ様 ― 属人化解消と品質統一で成果が向上
- 7.3.事例から学ぶ「営業の型化」のポイント
- 8.まとめ|営業の型化は「仕組みとして成果を出す」ための土台
営業の型化とは?属人化を防ぐための定義と誤解されがちなポイント
営業の型化の定義
営業の型化とは、成果につながる営業行動・思考・プロセスを構造化し、再現可能な形で組織に定着させることを指します。
重要なのは「行動」だけでなく、
- どの情報をどう整理しているのか
- なぜその質問をしているのか
- どのタイミングで次のアクションを切り出しているのか
といった判断基準や思考プロセスまで含めて型にする点です。
よくある誤解
誤解 | 実際 |
型化=台本営業 | 状況に応じて使い分ける“判断の型”が重要 |
ベテランのやり方を真似ること | 成果要因を分解・抽象化すること |
管理のためのルール | 現場が成果を出しやすくする仕組み |
型化は営業の自由度を奪うものではなく、成果を出すための“共通言語”をつくる行為だと捉えると理解しやすいでしょう。
なぜ今、営業の型化が求められているのか|BtoB営業を取り巻く環境変化
① 商談の高度化・複雑化
BtoB営業では、顧客側の情報収集が進み、単なる商品説明では価値を感じてもらえなくなっています。課題整理・意思決定支援・社内調整支援など、営業に求められる役割は高度化しています。
この状態で属人的な営業を続けると、
- 成果が出る人と出ない人の差が拡大
- 育成に時間がかかる
- 組織としての学習が進まない
といった問題が顕在化します。
② 人材流動性の高まり
終身雇用が前提でなくなった今、「人が辞めても成果が落ちない営業組織」をつくることは経営課題です。営業の型化は、知見を個人から組織へ移転するための仕組みとも言えます。
③ インサイドセールスと分業化の進展
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスと役割が分かれるほど、
- どこで何を判断するのか
- 次工程に何を引き渡すのか
を明確にしなければ、成果は出ません。ここでも型化が不可欠になります。
営業の型化で設計すべき3つのレイヤー|プロセス・行動・思考
営業の型化は、以下3層で考えると整理しやすくなります。
① プロセスの型(WHAT)
- リード獲得〜受注までのフェーズ定義
- 各フェーズで達成すべき状態
- 次工程へ進む判断基準
② 行動の型(HOW)
- ヒアリング項目
- 提案の構成
- ネクストアクションの取り方
③ 思考の型(WHY)
- なぜその質問をするのか
- なぜ今この提案なのか
- どの情報を重視するのか
多くの企業は①②で止まりがちですが、③まで踏み込むことで初めて再現性が生まれます。
営業の型化を進める実践ステップ|設計から定着までの流れ
STEP1|成果が出ている営業を分解する
まずはトップ営業の「結果」ではなく「プロセス」を観察します。
- 商談録画・録音の分析
- 同席・シャドーイング
- 本人へのヒアリング
ポイントは「無意識にやっていること」を言語化することです。
STEP2|共通要素を抽出し、型として整理する
複数の成果事例から共通項を抜き出し、
- ヒアリングの流れ
- 意思決定者の見極め方
- 提案タイミング
などを整理します。
STEP3|ツール・教育に落とし込む
型は作っただけでは定着しません。
- SFA / CRMへの項目反映
- トーク例・質問集の整備
- ロープレ・OJT設計
ここまで含めて初めて「使われる型」になります。
STEP4|運用データから改善する
受注率・失注理由・商談の滞留などをもとに、型をアップデートしていきます。
よくある失敗パターン|なぜ営業の型化は失敗しやすいのか
営業の型化は重要性が語られる一方で、「やったが成果が出なかった」という声も少なくありません。ここでは、現場で特に多い失敗パターンを深掘りします。
失敗例 | 背景・原因 | 改善のヒント |
形だけのマニュアル | 管理部門主導で現場の実態が反映されていない | 商談ログ・録画をもとに現場起点で設計 |
ベテランのコピー | 個人スキルをそのまま転写している | 共通項を抽象化し「判断基準」に落とす |
守られない型 | 型を使うことで成果が出る実感がない | KPIと連動させ成功体験を作る |
更新されない | 一度作って満足している | データを見て改善する運用設計 |
特に多いのが、「営業の型化=管理強化」と誤解され、現場に反発が生まれるケースです。成果につながる設計とセットでなければ、型は形骸化します。
営業の型化は「一度作って終わり」ではなく、運用しながら育てるものです。
事例に学ぶ|営業の型化が機能したケース
営業の型化は、単にスクリプト化やルール化するだけではなく、現場の行動・判断・思考を体系化し、全社で再現可能にすることが重要です。
ここでは弊社の支援事例の中から、型化が組織成果につながった代表的なケースを2つ紹介します。
事例① 株式会社ピーアール・デイリー様 ― 型化 × 育成で“成果直結の営業”へ
▼背景
求人広告・採用支援事業を展開する株式会社ピーアール・デイリー様では、事業拡大にともない営業メンバーの育成が課題になっていました。特に新卒・若手層が育成プロセスの中で成果につながらず、成長実感を得られていないという声がありました。
事例記事はこちら▶株式会社ピーアール・デイリー
▼取り組み
エンSXでは、単に“型”を示すだけでなく、営業プロセス全体の体系化と伴走支援を提供しました。
- 初動アプローチ・ヒアリング・商談の各ステップでの判断基準を明確化
- 実践的なロールプレイング・フィードバック設計
- 商談進行の型(導入→課題提示→価値提案→合意形成)を明示化
これにより、受講生の8割が平均業績アップ、平均受注額が向上するという成果につながっています。また、商談録画を教材化する運用を取り入れることで、属人化しがちな営業スキルを組織知として蓄積する文化も醸成されました。
ただ行動を“真似る”のではなく、どのタイミングで何を判断しているかという“型”を共有することで、再現性のある成果に繋がった好例です。
事例② 株式会社グロップ様 ― 属人化解消と品質統一で成果が向上
▼背景
人材派遣・アウトソーシング事業を展開する株式会社グロップ様では、拠点ごとに営業コーディネーターの面談やプロセスがバラバラで、品質が安定しないという課題がありました。特に拠点間の属人化が進行し、営業プロセスの標準化・型化の必要性が高まっていました。
事例記事はこちら▶株式会社グロップ
▼取り組み
エンSXが支援したのは、面談・提案・判断の型を言語化し、現場に落とし込む運用まで。
- 面談の進め方・ヒアリング軸を標準化
- 職種・拠点を越えて再現できる進行フローを策定
- 若手〜中堅までを対象とした研修設計と定着支援
その結果、研修後の配属率は全体で10ポイント向上し、チーム全体の成果と業務満足度の向上に寄与しました。現場からは「仕事が楽しくなった」という声も聞かれるようになっています。
事例から学ぶ「営業の型化」のポイント
上記2事例に共通する成功要因は以下の3点です。
- プロセスの言語化
どのタイミングで何を聞き、何を判断するかを明示化している - 判断基準の共有
個人の経験・勘ではなく、「再現可能な判断基準」を設計している - 教育と運用のセット化
ロールプレイ・録画学習・フィードバックによって、現場で実際に使われる型になっている
これらの事例は、「営業の型化」が単なるテンプレートや台本ではなく、成果を出すための基準設計と運用設計を組み合わせた仕組みであるということを示しています。型化には、「見える化→言語化→定着化」のプロセスが必要なのです。
まとめ|営業の型化は「仕組みとして成果を出す」ための土台
営業の型化を“絵に描いた餅”で終わらせないために
営業の型化は、考え方を理解しただけでは成果につながりません。
重要なのは、
- 自社の商材・顧客に合わせて設計されているか
- 現場が実際に使える形に落とし込まれているか
- データをもとに改善され続けているか
という運用視点です。
インサイドセールス〜商談まで一貫して設計するという選択
近年は、インサイドセールス(初期接点)と通常商談(提案・クロージング)を分業する企業が増えています。その分、営業の型化には全体最適の視点が欠かせません。
0.5次商談や二次架電といった考え方も含め、「どの段階で、どの判断を行い、何を次に引き渡すのか」を明確にすることが、成果の再現性を高めます。
営業の型化に課題を感じている方へ
もし、
営業の属人化から抜け出せない
型化に着手したが、現場で使われていない
インサイドセールスと商談の分断に悩んでいる
と感じているなら、第三者の視点でプロセスを整理し、設計から定着まで伴走する支援が有効です。
当社では、インサイドセールス支援に加え、営業組織全体を対象としたセールスイネーブルメント支援を提供しています。
営業プロセスの可視化から、成果につながる型の設計、現場定着までを一貫して支援しています。まずは、自社の営業活動がどこで属人化しているのかを整理するところから始めてみてください。
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