BANT情報とは? 営業で活用するメリットや聞き方のコツなどを解説
BANT情報とは、法人営業で重要とされているヒアリング項目のことです。営業ターゲットからBANT情報を聞き出すことにより、商談の成約率を上げやすくなるなどのメリットがあります。
本記事ではBANT情報をわかりやすく解説します。BANT情報の概要やメリット、聞き出し方、活用のコツなどを解説しますので、「商談を効率よく進めたい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.BANT情報(バント情報)とは
- 1.1.Budget:予算
- 1.2.Authority:決裁権
- 1.3.Needs:需要・必要性
- 1.4.Timeframe:導入時期
- 2.営業でBANT情報を活用するメリット
- 3.BANT情報が不足すると失注のリスクが高まる
- 4.BANT情報の聞き方のコツ
- 4.1.B:予算を早めに聞き出す
- 4.2.A:決裁者と決裁フローを確認する
- 4.3.N:潜在的なニーズを掘り起こす
- 4.4.T:導入時期は営業側からも提案して伴走する
- 5.BANT情報の具体的な活用方法
- 6.営業でBANT情報を活用する際の注意点
- 7.まとめ
BANT情報(バント情報)とは
BANT情報とは、法人営業(BtoB営業)で重要とされているヒアリング項目のことです。「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(需要・必要性)」「Timeframe(導入時期)」の頭文字をとってBANT情報と呼ばれています。
営業ターゲットからBANT情報を聞き出すことにより、受注の確度を高められます。まずは各項目について、詳しく見ていきましょう。
Budget:予算
BANT情報のBは「Budget(予算)」です。「商品やサービスを導入するための予算があるか」「予算がある場合はどの程度の金額か」などを顧客からヒアリングすることにより、現時点で受注の可能性がどのくらいあるか推測できます。
Authority:決裁権
BANT情報のAは「Authority(決裁権)」です。法人営業では決裁権のある人物を特定し、的確にアプローチすることが重要視されています。
現場担当者に対してのみアプローチを繰り返しても、最終的に商材の導入を決定できるのは、決裁権を持つ人物だからです。組織の意思決定ができる決裁者を特定し、適切な提案を行なう必要があります。
Needs:需要・必要性
BANT情報のNは「Needs(需要・必要性)」です。自社商材がどんなに魅力的でも、顧客に需要がなければ導入されません。受注の確度を高めるには、顧客のニーズを聞き出す必要があります。
ただしターゲット企業の現場担当者が、個人的に必要性を感じていたとしても、「組織として」必要性を感じてもらえなければ、導入に至る可能性は低いでしょう。組織としての顕在的・潜在的ニーズを深掘りできるよう取り組むことが重要です。
Timeframe:導入時期
BANT情報のTは「Timeframe(導入時期)」です。顧客が商材の導入時期をどう考えているかによって、実施すべきアプローチの手法や頻度が変わるため、おおよそのスケジュールを聞き出して把握しましょう。
「商材をすぐに導入したいのか」「すぐではない場合、いつ頃に導入したいのか」といった情報がわかると、優先的にフォローすべき顧客や実施すべきアプローチ方法を判断しやすくなります。結果的に、タイミングのズレによる失注を防げるでしょう。
営業でBANT情報を活用するメリット
続いて、営業でBANT情報を活用する具体的なメリットを4つ解説します。
アプローチの優先順位をつけられる
一般的に法人営業では、複数の企業へ同時にアプローチするケースが多くなります。自社の営業担当者が複数の顧客を抱えている場合、優先順位をつけないと、適切なタイミングで提案できず失注する可能性があります。
そこで顧客からBANT情報を聞き出し、アプローチの優先順位をつけることが大切です。
・商材の需要はどの程度あるのか
・導入予算はどの程度確保されているか
・導入時期はどのようなスケジュールになりそうか
上記のような情報を具体的に聞き出し、優先順位をつけて顧客へアプローチすれば、タイミングを逃して失注する危険性が低くなります。
顧客への理解が深まり適した対策を打てる
BANT情報を収集することで、獲得したリード(見込み顧客)への理解が深まります。リードの状況を把握し、それぞれに適した営業施策を打てるようになるため、受注の可能性を高められるでしょう。
過去の商談からヒントを得て戦略立案できる
獲得したリードからBANT情報を収集し、集めた情報をITツールなどに蓄積していけば、過去の類似した商談からヒントを得て戦略立案できる状態をつくれます。新規リードを獲得したら、なるべくBANT情報を収集するよう営業担当者へ周知し、過去に行なった商談のデータを次の営業に活かせるようにしましょう。
進捗状況を可視化できるため組織が連携しやすくなる
顧客からBANT情報をヒアリングし、聞き出した情報をITツールなどで管理すると、営業の進捗状況を可視化できます。
・何の情報をどの程度まで詳しく聞き出せたのか
・営業戦略を立てるにあたり足りていない情報は何か
・不足している情報を聞き出すために行なうべき施策は何か
BANT情報を収集・管理することにより、上記のような顧客情報を可視化して整理できます。営業チーム内で必要な情報を共有できるようにしておけば、連携体制の強化にもつながるでしょう。
BANT情報が不足すると失注のリスクが高まる
BANT情報が不足した場合のデメリットもご説明します。営業活動で顧客のBANT情報が不足すると、失注の可能性が高くなります。以下の表に、各情報が不足した場合のリスクをまとめたので、念頭に置いておきましょう。
不足している情報の項目 |
情報が不足した場合の主なリスク |
B(予算) |
・値引き交渉が長期化する |
A(決裁権) |
・営業プロセスが停滞する |
N(需要) |
・導入への反対意見を防げなくなる |
T(導入時期) |
・他案件との優先順位がつけられなくなる |
BANT情報の聞き方のコツ
ここからは、BANT情報を顧客から聞き出すときのコツを解説します。項目ごとに解説しますので、ヒアリングの際にお役立てください。
B:予算を早めに聞き出す
顧客に予算がなければ、いくら提案しても導入されない可能性が高いでしょう。そのため予算はBANT情報の他項目よりも、なるべく早めに聞き出すことが大切です。
初めて取引する顧客の場合は、「過去の似たような案件では、このくらいの価格が平均的だったのですが、ざっくりとしたご予算を伺ってもよろしいでしょうか?」と目安となる情報を開示したうえでヒアリングするとよいでしょう。
過去に何らかの契約をしたことがある顧客なら、「ご予算は以前と同じくらいでよろしいでしょうか?」と、既存の取引を参考にして聞き出すのも有効です。
A:決裁者と決裁フローを確認する
法人営業では導入を決定するまでの間に、複数人から承認を得る必要があります。企業の規模が大きくなるほど承認フローが複雑になる傾向もあるため、決裁者と決裁フローを確認し、「誰に・どのタイミングで」アプローチすべきか判断しやすい状態をつくりましょう。
決裁者を聞き出すときは、まず今話している現場担当者の決裁権を確認します。たとえば、「今回ご案内させていただいたサービスにつきまして、最終的に導入を決定されるのは(現場担当者)様でしょうか? それとも上長の方でしょうか?」と伺い、決裁者と決裁フローをヒアリングしましょう。
もし最終的な決裁者が現場担当と別の場合は、「では次回お伺いする際に、(決裁者)様とお話する機会をいただけるとありがたいのですが、いかがしょうか?」と面談の機会を確保できるようお願いしましょう。
N:潜在的なニーズを掘り起こす
顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、そのニーズを満たす手段として自社商材を提案すると、受注につながる可能性が高くなります。ニーズを確認するときは、顧客に起こりうる課題を営業側から提示し、解決のため伴走する体制を整えることが重要です。
潜在的なニーズは、顧客側で気づいていない可能性があります。何度か話して信頼関係を構築し、営業側から顧客の課題と解決策を提案して、具体的な商談につなげましょう。
たとえば、「以前お聞きした○○について、弊社でサポートできる部分をお調べしてまいりました。前回○○という状況とお伺いしましたので、○○が御社の課題になりうる部分だと思われますが、実際のところいかがでしょうか?」といった切り出し方で、顧客に起こりうる課題を提示します。
それから率直な意見を伺い、会話のなかで内情を聞き出し、実際の課題を特定しましょう。大切なのは、担当者の個人的な課題ではなく「組織としての課題」を共有してもらうことです。
組織としての課題を特定したら、「○○の課題を解決する手段のひとつとして、弊社の(サービス名)がお役に立つと考えております。よろしければ(サービス名)を活用した解決方法について、(決裁者)の方も含めて皆様にお話させていただきたいのですが、いかがでしょうか?」といった流れで自社商材を提案しましょう。
T:導入時期は営業側からも提案して伴走する
納期について顧客側に希望がある場合は、具体的なスケジュールを決めやすいでしょう。「〇月までに導入されたいのですね。(サービス名)であれば、最短で〇月に納品可能です。ご都合はいかがでしょうか?」といったように具体的な導入計画を立てられます。
しかし、顧客側に納期の希望がない場合は、営業側から大まかなスケジュールを提案し、積極的に導入時期を定めなくてはなりません。商談を長引かせると、顧客から「やっぱり要らない」と判断される可能性もあるため、導入スケジュールはなるべく迅速に決めましょう。
たとえば、「弊社の(サービス名)は導入までの期間が平均〇ヶ月程度となっております。貴社の場合○○というご事情がおありですので、〇月頃の導入が目安となりますが、ご都合いかがでしょうか?」と過去の類似した商談を参考に導入時期を絞り込むのも効果的です。
BANT情報の具体的な活用方法
続いて、BANT情報の具体的な活用方法を紹介します。
BANT情報を使って確度の高い案件を絞り込む
BANT情報をもとに受注確度の高い案件を絞り込み、優先順位をつけてアプローチすることにより、営業を効率的に進められます。BANT情報で確度の高い案件を絞り込むときは、前もって以下のような条件を定めておきましょう。
「確度が高く、優先度も高い」 と判断する条件 |
「確度が低く、優先度も低い」 と判断する条件 |
|
B(予算) |
予算が100万円以上 |
予算が100万円以下 予算を確認できていない |
A(決裁者) |
決裁者が特定できている 具体的な役職や氏名がわかる |
決裁者が特定できていない 現場担当との面会のみ |
N(需要・必要性) |
ニーズの確認が取れている 商材の有用性を説明できている |
ニーズの確認が取れていない 顧客の課題がわからない |
T(導入時期) |
1年以内の導入を検討している 具体的な導入時期の希望がある |
1年以内の導入を検討していない 導入時期の確認が取れていない |
BANT情報を活用すると、案件の受注確度を客観的に判断できます。上記の例のように、何をもって「受注確度が高い/低いとするのか」という絞り込みの条件を定め、保有する案件を振り分けてみましょう。
営業の進捗管理やボトルネックの分析に役立てる
BANT情報を収集して管理すると、「顧客の情報をどの程度まで詳しく把握しているか」がわかりやすくなるため、営業の進捗状況を可視化できます。収集したBANT情報をもとに案件を比較し、営業活動のボトルネックを分析することも可能です。
たとえば顧客のBANT情報を見比べたとき、「A(決裁者)」を聞き出せていないケースが特に多かったとします。その場合、自社には「A(決裁者)」の特定に課題があるため、具体的な解決策を講じる必要があると判断できます。
つまりBANT情報を適切に収集・管理すると、自社の営業課題が明確化されるのです。各課題の解決策を考えて実践し、PDCAサイクルを回すことにより、営業の質が改善され成約率を上げられるでしょう。
営業でBANT情報を活用する際の注意点
最後に、営業でBANT情報を活用する際の注意点を4つ解説します。
BANT情報を揃えることに固執しない
BANT情報は重要なヒアリング項目ですが、情報を揃えることに固執しないよう注意しましょう。「BANT情報を揃えられないから商談を先に進められない」といったふうに固執してしまうと、営業活動が停滞します。
時にはBANT情報をすべて揃えられなくても、商談が進むケースもあるので、運用に融通を利かせて柔軟に対応することが大切です。
BANT情報を過信しないよう注意する
顧客から得たBANT情報を過信しないよう心がけましょう。BANT情報は途中で変化する可能性があるため、過信するとアプローチの方法を誤ってしまいます。
たとえば、営業を開始した当初に「今年度は予算を確保できない」と顧客から言われていたとしても、年度の途中で事情が変わり、予算を回せることになるかもしれません。
BANT情報を過信すると、顧客の急な変化に対応しづらくなります。聞き出した情報は、営業戦略を考案する際の参考程度に留めておくとよいでしょう。
BANT以外の情報やフレームワークも活用する
営業活動にはBANT情報以外にも、さまざまなヒアリング項目やフレームワークがあります。代表的なフレームワークには、以下のようなものが挙げられます。
・BANTC
・BANTCH
・MEDDIC
・GPCTBA/C&I
・SPIN話法 など……
状況によっては、BANT情報だけに固執するのではなく、ほかの情報やフレームワークを活用したほうがよいケースもあるでしょう。時代とともに効果的とされる情報やフレームワークは変わります。何が最適なのか、柔軟に判断する姿勢を持つことが大切です。
なお、SPIN話法については、以下の記事で詳しく解説しています。SPIN話法とは、4種類の質問を通して顧客ニーズを引き出し、解決方法を策定するための話法です。詳細を知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
▼SPIN話法とは?4つの質問で顧客解像度を上げるコツ
https://sales.en-sx.com/column/no8_spin
営業担当が主導して自然な流れでヒアリングする
BANT情報はアンケート調査を行なうだけでも、ある程度は収集が可能です。しかし、営業の工数を省きたいからといって、アンケート調査だけで収集すると、情報不足に陥り判断を誤る可能性があります。
なるべく営業担当者が会話を主導し、自然な流れでBANT情報を引き出すようにしましょう。正確かつ具体的な情報を集めて、顧客への理解を深めれば、次にやるべきアプローチが自然と見えてくるはずです。
まとめ
BANT情報の概要やメリット、聞き出し方、活用のコツなどを解説しました。BANT情報とは、法人営業(BtoB営業)で重要とされているヒアリング項目のことです。
「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(需要・必要性)」「Timeframe(導入時期)」の頭文字をとってBANT情報と呼ばれており、収集すると受注確度を高めやすいなどのメリットがあります。
しかし、すべての顧客から正確なBANT情報を聞き出すのは難しいことです。「BANT情報を集めるためのノウハウがない」「営業リソースが少なくヒアリングに工数をかけられない」などの状況でお困りの場合は、ぜひ『エンSXセールス』にご相談ください。
エンSXセールスは、アウトバウンドの戦略構築から実行までをワンストップで伴走支援するサービスです。エンSXセールスでは営業活動の支援を開始する前に、依頼企業と打ち合わせして、最低限のヒアリング項目を定めています。
「見込み顧客のBANT情報をヒアリングしてほしい」といったご依頼にも対応可能です。複数のトークスクリプトのパターンを検証して、よりアポイントにつながりやすくなるよう調整します。
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