
まず、区分がない状態で何が起きるかを見てみましょう。
下記は、あるサンプルの月次実績です。
前月 | 当月 | |
リード数 | 480件 | 515件 |
送客数(商談化数) | 65件 | 61件 |
送客率 | 13.50% | 11.80% |
リード数は増えているのに、送客率は1.7pt下がりました。
さて、ここから何が言えるでしょうか。
正直に言えば、ほぼ何も言えません。
言えることは「下がった」という事実だけで、そこから導ける打ち手は「もう少し丁寧に架電しよう」「クリエイティブを見直そう」といった、中身のない改善案になります。
そして翌月、また同じ会話をすることになります。
区分設計とは、この中身のない改善案を具体的な意思決定に変えるための、最も地味で最も効果のある作業です。
区分設計と言うと、リードを分類する作業だけをイメージされるかもしれません。
ただ、分類しただけでは打ち手は決まりません。必要なのは下記の2段階です。
①リードを3階層で分ける(チャネル/顧客行動/コンテンツ)
②分けた単位ごとに、アポイントにならなかった理由を持つ

私の経験上、多くの企業様は①だけを持っています。しかも、後述する大区分で止まっているケースがほとんどです。
そして②を持っている企業様は、ぐっと少なくなります。
この2系統を掛け合わせた単位こそが、意思決定に使える最小単位になります。
順番に見ていきましょう。
様々な企業様をご支援する中で、最もよく使う経路区分をご紹介します。私がよく使っている経路区分は、下記の3階層です。
階層 | 内容 | 例 | 紐づく意思決定 |
大区分 | チャネル | リスティング広告、SNS広告、セミナー、メールマーケティング、比較サイト、展示会 | 予算をどこに置くか |
中区分 | 顧客行動 | ホワイトペーパーDL、パンフレットDL、セミナー登録、セミナー参加、メール返信、問い合わせ | どう追客するか、どの順で当たるか |
小区分 | コンテンツ | ホワイトペーパーのテーマ、セミナーのテーマ、メールの件名、広告クリエイティブ | 次に何を作るか |
重要なのは、3階層がそれぞれ別の意思決定に紐づいているという点です。
大区分だけを持っていると、できるのは予算配分の議論だけになります。「セミナーは効率が良い」「広告は落ちている」といった粒度の会話です。
これは経営報告には使えますが、現場の打ち手には落ちません。
中区分(顧客行動)が最も見落とされている
3階層の中で、最も持たれていないのが中区分です。
そして最も情報量が多いのも中区分です。
理由は明確で、顧客行動は「その人がいまどの検討段階にいるか」の代理指標になっているからです。
サンプルで見てみましょう。
大区分(チャネル) | 中区分(顧客行動) | リード数 | 送客率 |
セミナー | 参加 | 60件 | 25.00% |
セミナー | 登録のみ(不参加) | 90件 | 12.20% |
オウンドメディア | パンフレットDL | 45件 | 26.70% |
オウンドメディア | ホワイトペーパーDL | 120件 | 11.70% |
オウンドメディア | オンデマンドセミナー視聴 | 95件 | 16.60% |
リスティング広告 | 問い合わせ | 80件 | 13.80% |
まず、セミナーをご覧ください。
大区分でまとめると、セミナー全体150件で送客率17.3%です。悪くない数字に見えます。
しかし中区分で割ると、参加者と登録のみの方で、送客率が2倍以上違います。
同じ「セミナー経由のリード」として同じ追客をしていたとすれば、それは全く温度の違う相手に同じ球を投げていたことになります。
次にオウンドメディアですが、こちらは3つの行動が同じ大区分に入っています。
送客率は11.7%、16.6%、26.7%。大区分でまとめた平均は16.2%ですが、その平均に該当する顧客は実際には存在しません。
行動が違えば検討段階が違い、検討段階が違えば当てるべきアプローチも変わります。
セミナーであれば、「登録のみをした人」、「参加をした人」、「参加をしてアンケートを書いてくれた人」で顧客側の温度感が大きく変わります。
メディアも、そのサイトを通じて何を行ったのかによってアプローチの導線が変わります。
これらを分けることで、アプローチ内容と顧客のインサイトを近づけ、
良質のCVに繋げていくことができます。
ここまでは、リードをどう分けるかという話でした。
もう一つ必要なのが、分けた単位ごとに「なぜアポイントにならなかったのか」を持っておくことです。
区分だけを整えても、出てくるのは「この行動の送客率は11.7%です」という事実だけです。そこから打ち手を決めるには、残りの88.3%が何だったのかを知る必要があります。
そこで、未送客のリードに対して理由を残します。私が実際に使っているのは下記の6つです。
なお、その前段にあたる「接触時に課題があったかどうかを見る」という話は、以前の記事でも触れています。よろしければこちらもご覧ください。
▼参考ブログ:成果を生み出す「インサイドセールス」と「マーケター」の関係性
前回お伝えしたのは「キーマン接触と商談獲得の間に指標を1つ置きましょう」という話でした。
今回はその続きで、アポイントにならなかった側をどう扱うかが主題になります。
経路区分 × 未送客理由の掛け合わせ
さきほどの表に戻ります。
「セミナー登録のみ」が12.2%、「ホワイトペーパーDL」が11.7%。この2つは、ほぼ同じ数字でした。
経路区分だけで見ていると、この2つは「似たような評価のリード群」として、同じ扱いを受けることになります。
では、未送客だったリードを状態区分で分解してみます。
未送客の分類 | セミナー登録のみ | ホワイトペーパーDL |
要件ギャップ | 18% | 16% |
価格ミスマッチ | 14% | 8% |
時期ネック | 31% | 19% |
情報収集のみ | 20% | 42% |
心当たりなし | 5% | 6% |
対象外 | 12% | 9% |
同じ12%が、まったく違う中身であることがわかります。
分類ごとに手を入れる先は、下記のように異なります。
分類 | 手を入れる先 |
要件ギャップ | 訴求内容、LPの記載事項 |
価格ミスマッチ | ターゲット企業規模の見直し |
時期ネック | 追客設計(止めずに寝かせる) |
情報収集のみ | コンテンツ設計、ナーチャリング前提の設計 |
心当たりなし | 広告面、配信設定の点検 |
対象外 | 出稿面、ターゲティング設定 |
セミナー登録のみのリードは、時期ネックが31%を占めています。
そもそも当日参加できなかった方々なので、当然そうなります。 関心はあるが、いまその時間が取れない状態です。
この群に対して必要なのは架電の強化ではなく、アーカイブ配信の案内や次回日程の提示といった、寝かせながら接点を維持する設計です。
一方のホワイトペーパーDLは、情報収集のみが42%です。
こちらは課題整理の段階にいる方が多数なので、短期の商談化を期待する対象ではありません。評価すべきはアポイント率ではなく、その後どれだけ再接触できたかになります。
送客率だけを見ていた場合、この2つは同じ棚に置かれ、同じ改善案が当てられていたはずです。
余談ですが、実際にご支援先でこの分解を行った際、あるweb広告経路のNGのうち約2割が「心当たりなし」でした。
掘っていくと配信面の設定に起因するもので、獲得数を追う中では完全に見えなくなっていた部分でした。
区分は、正解を出すためのものではなく、議論の方向性を探るためにあるのです。
リードの区分設計についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
まとめると、下記のような整理になります。
区分設計やNG理由の深堀は、新しい施策を打つわけでもなく、見た目に派手さもない作業です。
ただ、これがないままチャネルとコンテンツを増やしていくと、増えた分だけ判断が難しくなっていきます。
逆にここが整っていると、マーケターとインサイドセールスが同じ言葉で会話できるようになり、毎月の議論を「感想」から「意思決定」にシフトさせていくことができます。
自社のリード管理の方向性を模索されているという方に対して、今回の記事が一つのヒントになれば幸いです。
今回の投稿は以上です。ありがとうございました。