
ここでいう「攻め」は、アップセル・クロスセルを積極的に行い、売上をつくることだけを意味しているわけではありません。
顧客から相談や問い合わせが来るのを待つのではなく、利用状況や契約状況、社内体制の変化などから解約リスクの兆候を捉え、問題が顕在化する前にこちらから働きかける。この記事では、このような「解約リスクを最小化するための能動的なカスタマーサクセス」を「攻めのカスタマーサクセス」と呼びます。
解約の問い合わせをもらってから阻止する難易度はものすごく高いですよね。ですが、例えば、過去カスタマーサポートに、利用不全で問い合わせがあり確認事項を返信したがその後連絡が来ない顧客や、システム上で自動入力機能があるのに毎月手入力されている箇所がある顧客など、解約予兆は感知でき、そこに対して手を差し伸べる仕組みや体制があれば、そのフォローの度に顧客の自社に対する与信は自然と高くなり、解約どころか他プロダクトの購買意欲すら自然と顧客側から湧いてきます。
先読みして、解約リスクを最小化し、自社サービスのことを好きになってもらう仕組みを作ることこそが「攻めのカスタマーサクセス」だと私は考えています。
新規インサイドセールスのアポ率は、一般的に「コールアポ率1%前後」が一つの目安として語られることがあります。ただし、実際のアポ率は一律ではありません。大きく左右するのは、主に以下の5つです。
条件 | アポ率が変わるポイント |
① プロダクト | 認知度・導入ハードル・市場ニーズ |
② アプローチ先 | 企業規模・業界・エリア・ターゲット母数 |
③ 狙う役職者 | 担当者・課長・部長・経営層など、接触難易度 |
④ アポOKの基準 | 情報交換でもOKか、課題・ニーズ確認まで必要か |
⑤ ISのレベル | 商材理解・仮説構築・ヒアリング・切り返し力 |
「結局、何%くらいアポが取れるの?」と端的な答えを求められていることは分かっていても、条件を無視して一律の数字をお伝えするのは難しい。数字で答えたい。でも、その数字が独り歩きしてしまうのも避けたい。インサイドセールスに携わる中で、いつも歯がゆく感じるポイントです。
カスタマーサクセスは、さらに数字で語るのが難しい領域です。初期導入支援なのか、利用が落ちている顧客へのフォローなのか、アップセル・クロスセルが目的なのか。目的によって「成功」の定義が変わり、契約継続率や解約率の算出方法も各社で異なります。
① カスタマーチャーンレート
契約している顧客のうち、一定期間で何%の顧客が解約したかを見る指標です。「顧客数」を基準に、どれだけ顧客を維持できているかを確認します。
② リベニューチャーンレート
契約している顧客からの売上のうち、解約やプランダウンによって何%の売上が失われたかを見る指標です。「売上」を基準に、解約が事業収益にどれだけ影響しているかを確認します。
顧客を守る活動の価値を考えるときは、「何社を守れたか」だけでなく、「どれだけの売上を守れたか」という視点も重要です。
カスタマーサクセスがアップセル・クロスセルをKPIに持ち、収益を追う組織であれば構造はシンプルです。ただ一方で、売上拡大を直接のKPIとしないケースもあります。
なぜでしょうか?
それは、営業目標の達成が優先されるあまり、顧客のサービス活用や満足度向上という本来の目的がおろそかになったり、顧客側が相談する度に提案をされると「相談すると追加の売り込みをされるのではないか」と警戒し、本音を話しづらくなってしまうためです。こうなると解約兆候を見つけにくくなるどころか、それが解約要因につながってしまうリスクさえ生まれてしまうのです。
そこで、利用満足度向上・解約防止を担う役割と、アップセル・クロスセルを担う役割を分け、それぞれに適したKPIを置く考え方があります。
解約防止を「担当者の頑張り」に任せるのではなく、再現性のある仕組みにする。そのために、まず設計したいのが次の3つです。
設計 | 決めること | 主な例 |
① 誰を守るか | 優先してフォローする顧客群 | 発注金額が大きい/利用が定着していない/メイン機能の利用が落ちた/更新が近い/推進者が異動した |
② いつ動くか | 能動的に接触するタイミング | 導入後3カ月/6カ月/更新前/利用率低下時/キーマン異動時 |
③ 何をKPIにするか | 活動と顧客変化を測る指標 | 更新率・解約率/フォロー実施・接触率/利用率改善/営業部門へのトスアップ |
すべての顧客に同じ濃さでフォローするのではなく、解約リスクが高まっている顧客を見つけ、優先順位をつけることが重要です。
例えば、上記の例以外で危ない状態をいくつか紹介しますと、システムへのログイン頻度・利用人数の減少、上位プランを購入頂いたのに下位プランの範囲でしか利用していない顧客なども注意が必要です。
下記は、弊社でカスタマーサクセス領域を支援しているプロジェクト内の特定のサービスの利用状況と解約率の相関の一例です。メイン機能の利用状況別に見た解約率が以下です。
メイン機能の利用状況 | 解約率 |
1年間使っていない | 53% |
少しだけ使っている | 20% |
想定程度使っている | 3% |
プロダクトの特性によって条件は変わりますが、「メイン機能の利用状況」を1年間使わない企業を如何に減らすかが大切だと分かります。
次に決めたいのが、フォローのタイミングです。重要なのは、更新直前になって初めて動くのではなく、顧客が価値を感じられていない兆候が出た段階で動ける状態をつくることです。
例えば、導入直後の3カ月は、設定や社内展開など顧客側の負荷が大きい時期です。その後、6カ月程度までに利用を定着させ、早期に導入背景の達成が出来たことを実感してもらうことも大切です。
一度運用に乗っても、利用率の低下や推進者の異動など、状態変化は定期的に起きますので、それをきっかけにフォローします。このプロダクトは期末にはこれぐらい使われるはずという月々の想定利用量に対してのギャップも見ていくとよいです。
最後がKPIです。解約率だけを追うと、結果が分かるのは解約が発生した後になりがちです。そのため、最終成果と、その手前にある活動・顧客変化をセットで追うのがポイントです。
レイヤー | KPI例 | 見る意味 |
最終成果 | 更新率/解約率 | 実際に顧客を守れたか |
顧客変化 | メイン機能利用率/利用範囲/ログイン状況 | サービス活用が改善したか |
活動 | リスク顧客への接触率/フォロー実施数 | 必要な顧客に動けているか |
連携 | アップセル・クロスセル担当へのトスアップ | 顧客ニーズを次の提案につなげられたか |
システム上細かい利用状況を追いきれない場合は、カスタマーサクセス担当のフォロー商談件数とアップセルクロスセルを行う部署への連携数をKPIにすることをお勧めします。解約防止ミッションのメンバーは、あくまでも自分では具体的な提案を行わないもののニーズを顕在化させ提案の許可を取るところまでをミッションを担ってもらいます。