こんにちは!エンSXでマーケティングを担当している草です。
前回はイベントの「モデレーター」というテーマでお話ししましたが、今回は少し普段の業務に近い話をしようと思います。テーマは、メールマーケティングにおける件名のタイトルワークについて。
私は弊社に着任前は親会社の主幹事業部のBtoBマーケ組織において、コンテンツマーケティングを担当していました。その際もメルマガを担当しており、一定の成果を挙げてきた自負がありました。ところが、エンSX着任後はガラリとハウスリストの属性や関係性が異なっており、それまで培ってきた「型」が効かずに思うような成果に繋がらなかった時期も。その後、日々改善を繰り返しながら360本超の配信を通じて、エンSXならではの「型」に昇華されつつあります。
その積み重ねの中で、最近ひとつ興味深い発見がありました。マーケティングチームでは日々のメール配信について、開封率・CTR・CTORといった指標を細かく分析しています。先日、過去の配信データを振り返っていたときのこと。歴代で最も開封率が低かった配信の一つが、実は「開いた人の反応率(CTOR)」では全配信中トップだった、という事実に気づきました。
つまりこういうことです。本文の中身は良かったのに、件名のせいで多くの人にスルーされていた。件名が悪いだけで、届くはずだった価値が届かなかった。この発見が、私にとって件名のタイトルワークを本気で見直すきっかけになりました。
今回は、実際の配信データをもとに、「機能する件名」をどう設計するかについてお伝えします。

まず前提として、表示上の開封率という指標には注意が必要です。BtoBのメール環境(特にOutlook)では画像非表示設定が標準なので、実際に読まれていてもカウントされないケースが多くあります。弊社では開封率だけでなく、CTR(クリック率)とCTOR(開封後にクリックした割合)を重視して評価するようにしています。
その上で改めて件名の役割を定義すると、件名は単に「開けさせる」ための装置ではなく、「誰のどんな話か」を一瞬で伝え、開いた後の本文への期待値を正しく設定するものだと捉えています。冒頭の「開封率は低いのにCTORはトップ」だった配信は、本文の期待値設定において件名が失敗していた典型例でした。
過去360本超の配信を振り返って傾向を整理すると、いくつかのパターンが浮かび上がってきました。
機能していた件名の傾向
パターン | 特徴 |
質問形式+営業現場の悩み | 「〇〇と〇〇、早いのはどちら?」のように二択で問いかける |
限定・希少性 | 「社数限定」など、対象や数量を絞ったことが伝わる表現 |
逆説・示唆 | 「〇〇はNG!」のように、常識への疑問を投げかける |
数字+ベネフィット | 具体的な数字とその先にある読者の得(ベネフィット)を組み合わせる |
実名×事例 | 実在する企業名や固有名詞を入れる |
機能していなかった件名の傾向
パターン | 特徴 |
ランキング系 | 「人気ランキング!」など、中身を開かないと何の話かわからない |
景品・プレゼント系 | 販促色が強く出てしまう |
抽象的で誰の話かわからない | 「来期の施策どうしよう?」など、対象読者が絞られていない |
自社告知中心 | 「〇〇に出展します!」など、読者の課題起点になっていない |
こうして並べてみると、機能していない件名に共通するのは「読み手の課題ではなく、送り手の都合が起点になっている」という点でした。
ランキング系や自社告知系は、社内では自然に書いてしまいがちな型ですが、読者からすると「自分に関係のある話かどうか」が一瞬で判断できず、スルーされてしまうのです。
自社データの振り返りと並行して、Morning BrewやInstantly、Sendsparkといった海外のBtoB SaaS企業の公開事例も参照しました。ここで見えてきた原則は、日本語のBtoBメールにもそのまま応用が利きます。
英語圏では「5語以下・33文字以下」が定石とされていますが、日本語のBtoBメールでは具体性のほうが文字数より重要です。短くしようとして抽象的になるくらいなら、多少長くても「何の話か即わかる」ことを優先すべきです。
【】を使う場合は、「対象を指定するラベル」ではなく「読者にとってのベネフィットの約束」として使うと機能しやすくなります。
たとえば書き手目線の【現場視点】よりも、読者目線の【1分で回答】【参加できなかった方へ】のような表現のほうが反応が取れます。逆に、中身の薄い煽り系の【】(【無料プレゼント!】など)は要注意です。
装飾記号や「!」の連発、企業からの告知然としたトーンは、読み手に「これは販促メールだ」と一瞬で判定させてしまいます。海外の分析でも、装飾なし・小文字始まり・1〜4語程度の口語調の件名が高い開封率を記録していました。
日本語で応用するなら、【】★※→といった記号や煽り表現を削り、同僚が気軽に共有してくれるような語り口を意識することが鉄則です。
「10の理由」より「7つの理由」、「100選」より「120選」。
人はキリのいい数字を見ると「マーケティング的な誇張」だと無意識に判定しますが、非ラウンドな数字は「実際にカウントされた数字」として受け取られやすくなります。
また、時間軸も「短期間で」「すぐに」のような曖昧な表現より、「28日で」「2週間で」のように具体的に区切ったほうが機能します。数字を件名の冒頭の定番位置(「3つの〜」など)ではなく、中盤や末尾など予期しない場所に置くことも効果的です。
「クリックしないと中身がわからない」だけでは弱く、読者にとって意味のある「未完成な情報」を提示することがポイントです。
型 | 特徴 |
問題ステートメント型 | 問題を名詞化して提示する。質問形式より強く、能動的な探索を誘発する |
似た企業×実名型 | 同業・同規模の企業の実名を入れることで、自分ごと化させる |
トリガーイベント型 | 資金調達・人事異動・参加イベントなど、直近の行動を起点にする |
型を知っただけでは実感が湧きにくいと思うので、実際に過去の件名をリライトしてみます。
Before:「【人気資料ランキング!】最も多くDLされたのは!?」
→ 開封率は歴代ワーストクラス。何のランキングか、自分に関係あるかが伝わっていませんでした。
After案:「営業組織の悩みTOP5は何か(直近半年のDL集計から)」
→ ランキングという形式は活かしつつ、「営業組織の悩み」という具体的な対象を冒頭に出すことで、誰向けの話かを即座に伝えられるようにしています。
Before:「来期の施策、どうしよう?新規チャネルをお試しするなら今!」
→ 誰の悩みなのかが曖昧で、開封率・CTRともに低調でした。
After案:「来期施策どこから着手?BtoB企業の成功パターン3つ」
→ 「どこから着手するか」という具体的な悩みに絞り、非ラウンドではないものの読者が数の見通しを立てやすい「3つ」という着地にしています。
こうして並べると、リライトでやっていることは共通して「送り手目線のふわっとした呼びかけを、読者目線の具体的な悩みに変換する」という作業だとわかります。
ここまで技法の話をしてきましたが、私が最も大事にしているのは、実はこれらの型そのものではありません。
「誰の、どんな悩みに、どう刺すか」を先に決めてから、技法を選ぶという順序です。
技法を先に決めて件名を作ろうとすると、どうしても「テクニックのための件名」になってしまいます。私たちが配信企画で実際にたどっているステップは、以下の通りです。
顧客選定:今回どのセグメントに送るかを決める
悩み選定:そのセグメントが抱える悩みリストから、今回刺す悩みを1つ選ぶ
中身設計:その悩みに対する有用なコンテンツを企画する
件名設計:ここで初めて、上記4原則を当てて件名を磨く
検証・更新:配信結果(CTOR)で悩み仮説の正しさを検証し、外れれば仮説を更新する
件名の技法は、あくまで4番目のステップで使う道具です。1〜3の「誰の、どんな悩みか」が定まっていないまま技法だけを当てはめても、うわべだけ整った件名にはなっても、本質的に刺さる件名にはなりません。
件名のタイトルワークは、地味に見えて実は「読者理解の解像度」がそのまま試される仕事だと感じています。技法は覚えれば誰でも使えますが、「今回は誰のどんな悩みに向き合うのか」を決める部分だけは、日々の顧客接点や配信結果の振り返りを重ねないと磨かれていきません。
明日からすぐに真似できる部分(4原則、Before→Afterの発想)と、地道な積み重ねが必要な部分(顧客課題の解像度を上げること)、両方をバランスよく育てていくことが、メールマーケティングの成果につながっていくのだと思います。
リードを獲得し続けるのにもCPAが高まり続け難易度が増す時代、ハウスリストへのナーチャリングやコンテンツマーケティングへと軸足を動かしていかれる企業も多いのではないでしょうか。そのようなマーケティング施策に関するお悩みも、弊社では壁打ちが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。