BDR(アウトバウンド)とSDR(反響営業)、
同じ「型」で商談してませんか?

「BDR経由の商談は、なぜか受注に伸び悩む」「商談化はできても、そこから先が続かない」

営業組織を率いる中で、こうした声を耳にする機会は少なくありません。多くの場合、原因は担当者の力量不足ではなく、「BDRとSDRを同じ商談の型で進めてしまっていること」にあります。

僕自身、その罠にはまった一人です。前職では約7年間、BDRを一気通貫で担当し、エンSX入社後は1年間SDRメインの商談、その後2年間はBDRメインの商談を経験してきました。その中で、SDRの感覚のままBDR商談に入って見事に討ち死にしたこともあります(後述します)。

BDRとSDRは各社で使い方が異なると思うので今回は以下で定義しています。

・BDR:電話・メール・手紙などで自社から能動的にアプローチし、関係を一から開拓した顧客

・SDR:何かしらの問い合わせを起点に接点が生まれ、自社商品に対してすでに一定の興味を持つ顧客

長崎 健吾
エンSX株式会社 営業責任者

2023年エン株式会社(前身:エン・ジャパン株式会社)へ中途入社。SX事業部に配属され、FS初期メンバーとして従事し、2024年から営業責任者へ。
現在はFSチームのマネジメントと並行し、自身ではエンタープライズ領域を担当。

両方を深くやってきたからこそ断言できることがあります。BDRとSDRは、商談の「型」を明確に切り替えなければ成果は出ません。

各社に商談の型があるのは当然です。ただ顧客の購買行動が変わり続ける以上、その型も常にアップデートが求められます。

私自身、前職で磨いたBDRの型をそのままエンSXに持ち込んで痛い目を見た経験があります。

「仮説をぶつける」前提で染み付いた喋り方が抜けず、興味を持って自ら問い合わせてくれた顧客に対しても一方的に仮説を押し付けてしまい、「いや、そこはもう分かってるので」と温度が一気に下がったことがあります。

業界・商材・顧客層が変われば、型も変わる。これが大前提です。

本題ですがSDR・BDRのそれぞれの理想の商談から紐解いていきます。

SDR商談の理想像:「聞く構造を設計する」

SDRの顧客はすでに何かしらのアクションを起こしています。

問い合わせ、資料請求、ウェビナー参加、形は違えど「自発的に動いた」という事実がある。

だからこそ陥りがちな落とし穴があります。それが「向こうから来てくれたのだから、あとはしっかり説明すれば売れる」という思い込みです。

私がBDR経験を経てSDR商談に入ったとき、正直なめていました。

インバウンドなのだから楽だろう、と。ところが受注率が安定しない。

振り返ると、私は「説明が上手い商談」をしていたのであって、「顧客の課題を引き出す商談」ができていなかったのです。

商談がうまくいくときには、共通する型があります。

① 今日のMTGのゴールを設定する

② 顧客の興味・現状・課題等をヒアリングする

③ 解決したい課題に合わせて提案をする

④ 次回アクションを設計する

という4つの流れで商談を構造化すると、進め方がぐっと整理できます。

振り返ると、うまくいった商談ほど、発話比率は「顧客7:営業3」に近づいていました。

優秀な営業ほどよく喋るのではなく、よく聞いています。

SDRにこれを当てはめると、商談設計の軸は自ずと見えてきます。

まずオープニングで「今日の商談のゴール」を顧客視点で握ること。

「本日はサービスのご説明をさせていただきます」では不十分です。

これは営業側のゴールに過ぎません。

顧客にはサービスを使う先の目的があります。

「採用コストを下げたい」「定着率を改善したい」その目的を起点にオープニングを設計することで、商談全体の温度が変わります。

「〇〇というお悩みをお持ちでご連絡いただいたとのことでしたね。本日はその課題を解決する手段として、弊社のアプローチと他の選択肢を整理した上でご判断いただける場にできればと思います。いかがでしょうか?」

このひと言があるだけで、顧客は「自分のための商談だ」と感じます。

次に、ヒアリングで課題の輪郭を鮮明にすること。

問い合わせの背景には必ず「表層のニーズ」と「本質的な課題」の両方があります。

たとえば「採用管理ツールを探している」という問い合わせの裏に、「現場マネージャーが選考に関与できておらず、ミスマッチ離職が頻発している」という根本課題が潜んでいることは珍しくありません。

表層だけ拾って提案すると、どれだけ説明が上手くても「なんか違う」で終わります。「なぜ今このタイミングで?」「今どんな状態が一番困っていますか?」こうした質問を重ねることで、顧客自身も言語化できていなかった課題が浮かび上がり、そこに提案を乗せることができます。

そしてヒアリングで課題が明確になったあと、SDRで見落とされがちなのが「クロージングの設計」です。

課題を深掘りできたのに、最後が「ではご検討ください」で終わってしまう商談は非常に多い。

せっかく顧客自身が課題を言語化できた状態になっているのに、そこで背中を押す一手が抜けているのです。

ヒアリングで出てきた課題に対して「それは弊社の〇〇で解決できます」と具体的に紐づけて提示し、「次にどうするか」のネクストアクションを顧客と一緒に決めて終わること、これがSDR商談の完成形です。

弊社では「本当にやるべきことを整理してくれたから信頼できると思い決めた」という受注理由が定期的に上がります。

聞く構造を設計し、課題を引き出し、次の一手まで握る。この流れが商談の中で完結しているかどうかで、受注率は大きく変わります。

SDRで土台を作った「聞く力」は、実はBDRでも必要です。

ただし、使い方はまったく異なります。

BDR商談の理想像:「仮説の質と意思決定構造の把握」

一方でBDRは、こちらから先にアプローチして初めて接点が生まれます。相手はまだ自社サービスを知らないか、そもそも課題として認識していないケースがほとんどです。

ここでSDRと同じ「まず聞く」から入ると、相手は即座に壁を作ります。「何の話?」という空気になった瞬間、商談はほぼ終わりです。

なぜなら、相手はこちらのアプローチを「売り込み」だと構えています。

その状態で「課題を教えてください」は、武器を持っていない状態で戦場に出るようなものです。

BDRの商談で最初にやるべきことは、「なぜ今この会社にアプローチしたのか」という仮説を、自信を持ってぶつけることです。

「御社のIRで〇〇という状況を拝見したときに、△△という課題が生じているのではないかと考えました。実際のところはいかがでしょうか?」

この仮説の精度が、そのままBDRの商談化率・受注率に直結します。

仮説が刺されば相手は前のめりになり、外れていても「実は...」と本音を引き出せる。どちらに転んでも、ヒアリングを深める起点になるのです。

では「精度の高い仮説」はどうやって作るのか。

ここをサボっている営業が非常に多いと感じます。

BDRは商談の場に来てもらうこと自体がまずハードルです。せっかく時間をもらったのに「御社の課題を教えてください」では、相手は時間を無駄にしたと感じます。商談前に最低限やるべきことは3つあります。

見るべき情報源

課題仮説へのつなげ方

①業界

業界特有の規制・商習慣・競合状況、過去の類似業種での商談実績

「この業界だからこそ起きやすい」構造的な課題を仮説化する

②事業構造

プレスリリース・求人票・IR情報(拡大期か、効率化期か等)

「今このフェーズだからこそ生じている」課題を仮説化する(拡大期なら人手不足、成熟期ならコスト最適化 等)

③役職・役割レイヤー

商談前に分かる役職・部署・組織図

「この立場だから響く」切り口を仮説化する(決裁者にはコスト削減、現場担当者には工数削減 等)

実際、あるエンタープライズ企業へのアプローチでは、求人票から組織拡大のフェーズにあることを読み取り、「拡大に伴って現場の選考工数が逼迫しているのでは」という仮説をぶつけたところ、「まさにそこで困っていた」と一気に本音を引き出せたことがあります。

仮説は当たり外れよりも、事前準備の量がそのまま質に跳ね返ってきます。

そしてBDRで商談が進み始めたときに、もうひとつ意識すべきなのが「意思決定構造の早期把握」です。

エンタープライズ企業の場合、目の前の担当者が「決める人」でないケースがほとんどです。

担当者が社内で稟議を上げ、上長が承認し、場合によっては他部署も絡む。このフローを把握しないまま提案を深めてしまうと、「上に持ち帰ります」と言われた段階で商談がブラックボックスに入り、そのまま消えていきます。

「最終的なご判断は〇〇様がされる形ですか?」「社内でご検討いただく際、他にご関与される方はいらっしゃいますか?」

こうした質問を商談の早い段階で自然に織り交ぜることで、その後の打ち手が変わります。

決裁者が別にいるとわかれば、担当者が「社内で説明しやすい材料」を一緒に作る方向に商談をシフトできます。

担当者を「味方」として巻き込む意識が、BDRにおいては特に重要です。

SDRと根本的に違うのはここです。

SDRは顧客自身のニーズを深掘りすることがゴールに近いですが、BDRは「顧客の社内を動かすこと」までを商談の設計に含める必要があります。

目の前の一人を説得するのではなく、その人が社内で動きやすくなる状態を作ること、これがBDR商談の本質だと、私は考えています。

共通して大切なこと

・型の言語化と継続的なアップデート

SDRは「聞く構造の設計」、BDRは「仮説の質と意思決定構造の把握」。

それぞれに軸となるポイントはあります。

ただ共通して言えるのは、自分たちの型を言語化し、定期的にアップデートし続けることの重要性です。

うまくいっている型でも、市場環境や顧客の購買行動が変われば気づかないうちに陳腐化します。

型を作って終わりではなく、型を疑い続けること。それが現代の営業において再現性のある成果を出す、今のところ僕が一番確実だと思っているやり方です。

まとめ

僕自身、両方の型を混同して痛い目を見た人間として断言できます。BDRとSDRを「同じ商談」として扱うことが、成果が出ない最大の原因になっているケースは少なくありません。

SDR

BDR

顧客の状態

興味・関心が顕在化している

課題認識が薄い・接点ゼロ

商談の起点

顧客視点でのオープニング設計

仮説のぶつけ合いと課題の可視化

ヒアリングの軸

表層ニーズの裏にある本質課題

意思決定者・承認フローの把握

ゴール設定

課題の言語化とネクストアクションの合意

次回接触設計とキーマンとの接点構築

ぜひ自社の型を今一度見直すきっかけにしていただけると幸いです。

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