こんにちは、エンSXの野田です。
本日は、エンタープライズ開拓において、私自身が最も「ここで勝負が決まる」と感じている論点として、「真のキーマンをどう見極めるか」について、生々しくそのままシェアしたいと思います。
特に、以下のような方には、ぜひ見ていただきたいです。

いきなりですが、こんな経験はありませんか。
立派な肩書きの「部長」にアプローチし、提案も通したはずなのに、いつまでも「検討中」で稟議が動かない。
気づけば音信不通になり、半年が経っている。
あるいは、商談で一番活発に話してくれた人を「この人がキーマンだ」と思い、一生懸命フォローしたにもかかわらず、案件はまったく前に進まなかった。
エンタープライズ開拓では、こうした「なぜか進まない案件」が必ず発生します。
そして、その多くに共通しているのが、「キーマンを誤認していた」ということです。
私自身、多くの案件を経験してきましたが、提案内容そのものよりも、「誰を巻き込めていたか」が受注を左右している場面を何度も見てきました。
本記事では、私自身の経験をもとに、「真のキーマンをどう見極めるか」について整理してお伝えします。
まず最初に、一つ整理しておきたいことがあります。
営業活動では、「決裁者」と「キーマン」が同じ意味で使われることがありますが、私はこの二つは分けて考えるべきだと思っています。

決裁者
キーマン
もちろん、大企業では部門長や本部長が最終的に決裁するケースがほとんどです。
しかし、実際には「ハンコを押す人」と「物事を前に進める人」は一致しないことが非常に多くあります。
ここには、大企業ならではの落とし穴があります。
組織図を見ると、決裁ルートは明確です。
しかし、その組織図だけを見ても、本当に案件を前に進められる人は分かりません。
実際には、
こうした"影響構造"によって、物事は動いています。
以前、私が所属していた組織でも、絶大な権限を持つトップ(仮にXさん)がいました。しかし印象的だったのは、その方本人だけではありません。
Xさんが厚く信頼している課長クラスの方々の発言が、組織全体に非常に大きな影響力を持っていました。
役職よりも、「誰から信頼されているか」で意思決定が進んでいく。
これは、多くの大企業に共通する構造だと思っています。
私たちは、組織図(形式)ではなく、影響構造(実態)を見る営業へシフトしなければなりません。
では、どうすればキーマンを誤認せずに済むのでしょうか。私は、誤認には大きく3つのパターンがあると考えています。
最初の誤認は、「決裁者=キーマン」という思い込みです。
これを防ぐために、私がまず意識しているのは、「人」を探す前に「場所」を見ることです。
真のキーマンは、会社のリソース(人・予算・期待)が集まっている場所にいる可能性が非常に高いと考えています。
場所 | キーマンがいる確率 | 理由 |
成長事業・注力事業の責任者 | ◎ | 予算と裁量を持っている |
成熟・縮小事業の責任者 | △ | 新規投資を進めにくい |
逆説的ですが、肩書きが高くても、成熟事業の責任者であれば、新しい取り組みを推進する余地は小さくなります。
一方で、会社が今まさに投資している成長領域では、責任者の発言力や裁量も大きくなります。
つまり、狙うべきなのは、「役職が高い人」ではなく、「会社が期待している場所にいる人」なのです。
「それは商談前に分かるのか?」と思われるかもしれません。
実は、会社がどこに投資しているかは、外部情報からかなり読み取れます。
私が必ず確認するのは、
です。
例えば、中期経営計画で「ソリューション事業への転換」が掲げられているのであれば、狙うべきは既存事業の責任者ではなく、新設されたソリューション部門の責任者です。
会社の期待と予算が、そこに集中しているからです。
場所を絞れたら、次は「その中の誰がキーマンなのか」を見極める必要があります。
ここで起きやすいのが、「一番喋る人=キーマン」と思い込んでしまうことです。もちろん、一番活発に話す人がキーマンであるケースもあります。
ただ、「よく話すから」という理由だけで判断するのは危険です。私自身、何度もこの誤認を経験してきました。
エンタープライズ商談では、4〜5名が同席することも珍しくありません。
その中には、
など、さまざまなタイプがいます。
私が意識しているのは、「誰が話しているか」より、「誰を見ながら話しているか」ということです。
商談中は、ぜひ「視線」と「空気感」を観察してみてください。
例えば、活発に話している人が、発言のたびにある人物の反応を確認しているとします。
その場合、本当に意思決定を左右しているのは、視線の先にいる人物かもしれません。
逆に、誰の顔色も気にせず発言し、周囲も自然に耳を傾けている人であれば、その人自身が高い影響力を持っている可能性があります。
営業は「会話」を聞きがちですが、「人間関係」を観察することも同じくらい重要です。
特に注目したいのが、「あまり話さない人」です。
同じ沈黙でも、その意味はまったく異なります。
沈黙のタイプ | 特徴 | 見極め |
① 支配する沈黙 | その人が口を開くと周囲の空気が変わる | 真のキーマン候補 |
② 委ねる沈黙 | あえて部下に任せ、自分は見守っている | 推進を任せる立場 |
③ 無関心の沈黙 | 誰も反応せず、存在感が薄い | 優先度は低い |
重要なのは、「その人が話しているか」ではなく、「周囲がその人をどう見ているか」です。
ここで一つ強調したいことがあります。
こうした観察だけで、キーマンを確定してはいけません。
観察は、あくまで「当たり」をつけるためのものです。視線や雰囲気は、その日の議題によっても変わります。
だからこそ、観察で仮説を立て、質問で確信を持つ。
この二段構えが重要なのです。
そして、私が最も見落としやすいと感じている誤認があります。
それが、「評論家タイプ」です。
商談をしていると、
「この部長はこういう人で…」
「この案件はこう進みそうで…」
と、社内事情を非常によく話してくれる方がいます。
営業としては、とてもありがたい存在です。しかし、いざ案件を任せてみると、自分では一歩も動かない。
そんなケースも少なくありません。
社内事情を知っていることと、社内を動かせることは、まったく別です。
つまり、「語れること」と「動けること」は違う。
ここを見誤ると、案件は前に進みません。
私がキーマンを見極める際に重視しているのは、次の2つです。
見るポイント | 確認したいこと |
① 解像度 | 稟議の通し方を具体的に語れるか |
② 行動力 | 自分で案件を推進した経験があるか |
この2つが揃って初めて、「この人なら社内を動かせる」と判断できます。
逆に、どれだけ詳しく話してくれても、実際に動いた経験がなければ、評論家で終わってしまう可能性があります。
では、実際にどうやって見極めればよいのでしょうか。
私が商談でよく使う質問を、目的別にご紹介します。
まずは、「どこで案件が止まりそうか」を聞きます。
例えば、
ここで具体的に答えられる方は、実際に稟議を通した経験がある可能性が高いです。
次に確認するのは、「自分で動かした経験」です。
例えば、
ここで、自分の経験として語れるかどうかが重要です。
評論家タイプは、「会社としては…」「他部署では…」という話はできますが、自分が主体となった話になると急に具体性がなくなります。
最後に、「どう通すか」を確認します。
例えば、
本物のキーマンは、固有名詞・順番・理由まで具体的に話してくれます。
その証言こそが、社内攻略ルートになります。
商談後、私は次のような観点で振り返るようにしています。
この4項目が揃うほど、その人が真のキーマンである可能性は高くなります。
ここまでお伝えしてきた内容を、実際の事例でご紹介します。
固有名詞は伏せますが、当社で実際にあったケースです。
もともと、ある大企業(仮にA社)の1部門と取引がスタートしていました。
その組織には部門長がいて、その下に副部長・課長・マネージャーがいる、よくある組織構成です。
もし私たちが「肩書きの誤認」に陥っていたら、次に狙うべき相手は部門長だったと思います。
「まずは部長を押さえよう」
そう考えるのが自然だからです。
しかし、実際に組織を見ていくと、社内を最も動かしていたのは部門長ではありませんでした。
実際に推進力を持っていたのは、課長のAさんでした。
Aさんと継続的にコミュニケーションを取る中で、少しずつ社内事情や意思決定の流れが見えてきました。
例えば、
「B部門なら、この部長はこういう考え方なので、この切り口が刺さると思います。」
「C部門は私も関わりがありますが、この順番で話を進めるとスムーズです。」
「営業部は今別案件で忙しいので、話を持っていくなら来週以降が良いですね。」
まさに、本記事でお伝えしてきた「稟議の通し方を具体的に語れる人」そのものでした。
私たちはAさんと二人三脚で社内調整を進め、提案内容も一緒にブラッシュアップしながら展開していきました。
その結果、当初は1部門のみだった取引が、最終的には4部門へと拡大しました。
この事例で成果につながった理由は、特別な営業テクニックがあったからではありません。
部長だけを追いかけるのではなく、「社内を実際に動かせる人」を見つけ、その方と伴走しながら社内展開を進めたこと。
それが結果につながりました。
肩書きではなく、誰が組織を動かしているのか。
そこを見極めることが、エンタープライズ営業では非常に重要だと考えています。
ここまで「キーマンの見極め方」をお伝えしてきました。
最後に、実践するうえで忘れてほしくないことが2つあります。
エンタープライズ営業では、複数部署が関わることも珍しくありません。
営業部には営業部のキーマンがいます。
情報システム部には情報システム部のキーマンがいます。
購買部には購買部のキーマンがいます。
つまり、「一人見つければ終わり」ではありません。
案件が広がるほど、新たなキーマンを見つけていく必要があります。
もう一つ大切なのは、撤退基準を持つことです。
どれだけ商談を重ねても、
こうした案件は、現時点ではタイミングではない可能性があります。
無理に提案を重ねるより、一度引き、人事異動や組織変更のタイミングを待つ。
これもエンタープライズ営業では重要な戦略だと思っています。
今回は、エンタープライズ営業で私が最も重要だと考えている「真のキーマンの見極め方」についてお話ししました。
改めて、お伝えしたいポイントは3つです。
「決裁者=キーマン」と思い込まない。
会社がリソースを注いでいる場所にいる人から探す。
一番話す人ではなく、
誰が誰を見て話しているのか。
誰の一言で空気が変わるのか。
商談では、そうした影響構造を観察する。
社内事情を語れる人ではなく、実際に社内を動かした経験がある人を見極める。
そのためには、「障壁」「推進経験」「意思決定ルート」を質問しながら確認することが重要です。
エンタープライズ営業では、形式的な決裁ルートを追うだけでは案件は動きません。
成果を左右するのは、「誰に提案するか」ではなく、「誰と一緒に社内を動かすか」です。
私自身、「1部門から4部門へ展開できた事例」も、特別な営業手法があったわけではありません。
肩書きではなく、本当に組織を動かせるキーマンを見極め、その方と二人三脚で社内調整を進めてきた結果です。
ぜひ皆さんも、次回のエンタープライズ商談では、
「この人は決裁者か?」ではなく、「この人は社内を動かせる人か?」という視点で顧客を見てみてください。
もし、「自社ではどのようにキーマンを見極めればいいのか」「今の案件で誰を巻き込むべきか」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。