こんにちは、山本です。
皆さん、こんな経験はありませんか?
3ヶ月や半年といった短期契約のプロジェクトで、現場の担当者とはすごく仲良くなった。
「ぜひ次もお願いします!」と言われて安心していたのに、いざ契約更新の時期になると――
「すみません、社内の予算が降りなくて……」
「上層部の判断で、内製化することになりました」
こうして契約終了を告げられるパターンです。
これはBtoBにおける典型的な「つまずきポイント」です。 なぜなら、「現場の『やりたい』」と「決裁者の『お金を出していい』」は全く別の理屈で動いているからです。
今回は、私が担当したプロジェクトにおいて、当初3ヶ月の短期契約だったものを、いかにして契約延長させ、さらに案件規模を5倍に拡大させたか。その裏側で行っていた「戦略的な決裁者へのアプローチ」について、実例を交えてお話しします。

まず前提として、3ヶ月契約の場合、3ヶ月目に継続交渉をしていては手遅れです。大企業であればあるほど、稟議や注文書の発行に軽く見積もっても数週間はかかります。逆算すると、プロジェクト開始から2ヶ月目には決裁者の意向を固めておかなければなりません。
私が実際に引いたロードマップは以下の通りです。
1ヶ月目: 現場窓口(担当者)を「協力者」にする
2ヶ月目: 決裁者に「フライング」で会いに行く
3ヶ月目: 事務的なクロージング
このプロセスで特に重要な「泥臭いアクション」を3つのステップで解説します。

プロジェクト開始直後、私たちがやりがちなミスは「タスクを完璧にこなして信頼を得ようとすること」です。もちろんそれは大前提ですが、それだけでは契約は伸びません。
私が1ヶ月目に徹底したのは、窓口担当者の信頼を勝ち取り、「決裁者を落とすための作戦会議」ができる関係になることでした。
具体的には、対面での挨拶や定例会議を通じて信頼関係を築いた上で、こう切り込みます。
「○○さん、僕らとしても継続して支援したいんですが、決裁者の□□さんが延長を決めるためには、どんな材料が必要だと思いますか?」
ここで重要なのは、以下の情報を担当者から引き出すことです。
そして、担当者自身も気づいていない「決裁者の好み」や「人柄」といった定性情報(BtoBセールスでは軽視されがちですが、これが超重要です)を集めます。
今回のケースでは、決裁の趣味嗜好といった情報を担当者との雑談から入手しました。これが後の関係構築でボディブローのように効いてきます。
多くのPMや営業担当は、「中間報告会」「タッチアップMTG」のような、契約期間中のキーイベントで初めて決裁者と顔を合わせ、そこで継続提案をしがちです。 しかし、「初めまして」の相手からいきなり提案されても、決裁者はリスクを感じて構えてしまいます。
私は、中間報告会の前に「ご挨拶」という名目で、担当者に頼み込んで決裁者とのアポイントをセットしてもらいました。 ここでの目的は提案ではありません。「ガス抜き」と「答え合わせ」です。
この面談で私は必ずこう聞きます。
「ここまでの評価は何点くらいですか? もっと良くするためには、何が必要ですか?」
あえて「足りていない部分」を直接聞き出すのです。 すると、「もっと運用体制を強化してほしい」「メール対応もやってほしい」といった本音がポロポロ出てきます。これを持ち帰り、次の中間報告会(正式な提案の場)で「先日おっしゃっていた課題に対して、次はこうします」と提案に盛り込むのです。
決裁者からすれば「自分の意見が反映された提案」になるため、NOとは言えなくなります。これが「出来レース」を作るということです。
事前に引き出した「メール対応もしてほしい」「CRM環境での運用も……」というニーズに対し、「それなら月●万円追加で対応可能です」と提案に乗せることで、単なる延長だけでなく、単価アップにも成功しました。
結果として、こうしたアップセルの積み重ねにより、当初の契約延長だけでなく、案件規模を5倍に拡大させることに繋がりました。
ここまで読んで「それは山本さんだからできたんでしょ?」「遠方だから無理」と思った方もいるかもしれません。
しかし、私がやったことは非常にシンプルです。
オンライン会議(Zoom等)はアジェンダ通りの話しかできず、雑談が生まれにくいという欠点があります。
私は片道数時間かかってもオフィスを訪問し、定例会議の前後の時間で「最近どうですか?」と雑談したり、空いている席で仕事をさせてもらったり(居座り)して、物理的な接触頻度を高めました。
接触頻度を高めることで相手の警戒心を解き、信頼関係を築きます。
訪問が難しい場合でも、「30分のWEB会議」を設定するのはハードルが高いですが、「10分だけ電話いいですか?」なら相手も応じてくれやすいです。
資料準備も不要で、フランクな相談ができるこの「隙間時間」こそが、本音を引き出すチャンスです。チャットの文字情報よりも、声を介したコミュニケーションの方がより相手の心情もはかりやすいものです。
「良い仕事をしていれば、契約は続くはずだ」 これは職人としては正しいですが、ビジネスとしては危険な賭けです。
このサイクルを、プロジェクト開始直後から意識して回せるかどうかが、3ヶ月後に「契約終了」となるか「大型継続」となるかの分かれ道です。
なかなかすぐに決裁者に会えないことももちろんあるでしょう。それでも、「トライする」ことが重要です。
打診をし続ける。それでも難しい場合はひとつ下のレイヤーにターゲットを切り替えてグリップにいく。関係者を巻き込みながら接触を試みる姿勢が次に繋がっていきます。
まずは担当者に「決裁者の方は、最近どんなことに関心がありますか?」と聞いてみることから始めてみませんか?