「売れない理由」を“構造”で解く——営業難易度をスコア化してみよう

「うちの商材は売るのが難しい」
「いや、あのチームは扱っている商品がラクだから成果が出るんだ」

営業の現場では、こんな会話が日常的に飛び交います。
けれど、よく考えてみると「難しい」とは何を意味しているのでしょうか。

  • 単価が高いから難しい?
  • 競合が強いから難しい?
  • 顧客が課題を認識していないから難しい?
  • 決裁プロセスが複雑だから難しい?

実際には、こうした“売りにくさ”は漠然と語られがちで、属人的な感覚に依存してきました。
でも、本当は営業の難易度は構造的に分解し、スコア化することが可能です。

そしてその構造を理解することこそ、 マネージャーにとっては育成の出発点であり、 若手営業にとっては「なぜ自分は売れないのか」を整理する最短ルートになります。

加納 誉也
エンSXセールスアナリティクス サービス責任者
2008年、エン株式会社(前身:エン・ジャパン株式会社)に新卒入社。一貫して企業の中途採用支援に携わり、営業マネージャー、営業部長、名古屋拠点長などを歴任。200名以上の営業メンバーの育成やマネジメントに携わる。2022年より「エンSX」事業(現エンSX株式会社)へ異動し、多くの成長企業のセールス・マーケティングを支援。また、エン・ジャパン初のセールスイネーブルメントツール「エンSXセールスアナリティクス」のプロダクト責任者として開発、事業推進を手掛けている。

営業の難易度は「提案力」と「推進力」の掛け算で決まる

営業という仕事を最もシンプルに分解すると、大きく2つの力に整理できます。

【1】提案力(課題を特定し、価値を示す力)

【2】推進力(案件を前に進め、受注まで取りきる力)

両方の力が必要ですが、扱う商材の特性によって「どちらがより必要か」は大きく異なります。

▼提案力とは何か?

提案力とは、顧客の課題を特定し、最適な解決策=価値を示す力。

提案力に影響する主な要素は次の通りです。

  • 顧客の課題の顕在・潜在度
  • 商材の複雑性(カスタマイズ要否、専門性)
  • ROIを説明する難易度
  • 競合の多さ・市場理解の必要性
  • 顧客が課題を自覚しているか

たとえば、顧客が課題を認識していない状態で、複雑な商材を提案し、さらにROIを言語化して説得する——

こうした案件では提案力が強く問われます。

▼推進力とは何か?

一方の推進力とは、提案後に案件を受注まで進める力です。

推進力に影響する主な要素は次の通りです。

  • 決裁者へのアクセスの難しさ
  • 利害関係者の調整の複雑さ
  • 社内承認プロセスの段階数
  • 購買頻度の低さ(非日常意思決定)
  • クロージングまでのリードタイム

特にBtoBのエンタープライズ案件などでは、推進力の差が結果の差に直結します。

どれだけ良い提案ができても、決裁者に届かなければ案件は動きません。

「売りやすい商材」と「売りにくい商材」の“構造”

ここで、提案力×推進力をマトリクスを用いて整理してみると、営業の難易度が一目で見えてきます。

推進力が低い

推進力が高い

提案力が高い

価値創出型(難易度:中)

例:専門商材・課題特定が鍵

コンサル型(難易度:高)

例:SaaS/業務改革支援

提案力が低い

反応待ち型(難易度:低)

例:既存商品のルート営業

案件推進型(難易度:中〜高)

例:大手向け提案営業

上に行くほど「提案の質」が求められ、 右に行くほど「社内外の巻き込み・推進力」が求められます。


この“構造化”こそが、営業力を再現性あるものに変える第一歩になりますし、自分や部下の営業がどの象限にいるのかを見極めるだけでも、“どんな力を伸ばすべきか”が見えてくるはずです。

“売れない理由”を見極める

マネージャーにとっては、部下の「努力の方向性」を可視化できます。

「提案内容は良いが、決裁者に届かない」なら推進力の課題。

「顧客の課題理解が浅く、提案が響かない」なら提案力の課題。

この切り分けができるだけで、指導の精度が格段に上がります。

若手営業にとっても、自分の“つまずきポイント”を構造で把握することは大きな武器です。

「気合いで乗り切る」から「原因を特定して改善する」へ。

営業力を鍛えるとは、センスではなく設計を磨くこと。

その最初の一歩が、「難易度を言語化する」ことなのです。

難易度を“見える化”することで、営業は再現性を持つ

営業は属人的な仕事だと思われがちです。

しかし実際には、構造を理解し、戦略を言語化すれば 再現性をもって成果が出せる仕事になります。

  • 商材の難易度
  • 組織の意思決定構造
  • 顧客の課題感
  • ステークホルダーの数
  • ROIの証明難易度

これらをスコア化するだけで、営業は「感覚頼りの個人戦」から「仕組みで勝つチーム戦」へ変わります。

4象限別に「伸ばすべき力」は異なる

では、先ほどのマトリクスにもとづき、象限ごとにどのようなアプローチで能力開発をすべきかというと、私は次のように考えています。

①反応待ち型(提案力低×推進力低)

→ 最優先は“型化と行動量”

  • トークスクリプト活用
  • FAQの暗記
  • 商談後の振り返りの徹底

②価値創出型(提案力高×推進力低)

→ 魅力的な提案ができても案件が前に進まないタイプ

  • 組織図を描く習慣
  • キーマン紹介依頼のタイミング最適化
  • 意思決定ステップの事前合意

③案件推進型(提案力低×推進力高)

→ 話は進むのに、内容が刺さらず成約率が低いタイプ

  • 課題深掘り質問の強化
  • ROI仮説テンプレの活用
  • 「なぜ今やるのか」の理由の言語化

④コンサル型(提案力高×推進力高)

→ トップ営業が目指す領域

  • 経営課題 → 業務課題への翻訳力
  • 意思決定会議向け資料の設計
  • 組織全体の合意形成プロセスのデザイン

営業難易度を構造化することで、育成の精度もあげていけます。
ぜひマネージャーや育成担当者は以下のステップを活用してみてください。

▼メンバーごとに象限を分類:“伸ばすべき力”が明確になる

▼商材難易度とメンバー特性をマッチング:組織編成の質が上がる

▼組織ごとの育成テーマを設定

▼商談レビューの質が向上

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エンSXでは、今回紹介した「提案力×推進力」の考え方をもとに、 自社商材・業界特性に応じた営業難易度スコアリングシートを提供しています。

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感覚ではなく構造で、“売れる力”の本質を見える化してみてください。

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