ABMでの受注率を飛躍させる秘訣

こんにちは、エンSXの野田です。

本日は、私自身がこれまでABMを何年もやり続けたり、沢山の企業様のABM活動を見る中で、受注率を最大化するために必要だと思う要素を、包み隠さずそのままシェアしたいと思います。

特に、以下のような方には、ぜひ見ていただきたいです。

  • 最前線でABMを実行するインサイドセールスの方
  • インサイドセールス/マーケティングマネージャー
  • 事業責任者の方

何故、今自社が上手くいっていないか?の一つの「ものさし」になれれば幸いです。

野田 勇次郎
エンSX 事業責任者
2016年エン株式会社(旧:エン・ジャパン株式会社)に新卒入社。法人営業からキャリアをスタートし、チームリーダー、マネージャーを経験。その後、SaaS領域やWebサイトUI・UXなどの新規事業に営業責任者として事業立ち上げを成功させる。2022年からはエンSXの立ち上げに参画し、事業責任者を務め、2024年に法人化。趣味はキックボクシング、サウナ。

■ ABMとは?

ABMとは「Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)」の略で、特定の企業を対象とし、その企業に合ったアプローチをしていく、BtoBマーケティングの手法です。

Webマーケティングや展示会などの施策では、優良リードを見込める一方で、確率に左右されます。必ずしも自社が狙った企業・部門の方と出会えるとは限りません。

一方でABMは、このような課題に対して、マーケ~セールス組織が足並みをそろえて、「狙ったキーマンからリードを獲得しよう」とする取り組みです。

私の感覚的には、今年に入り、”ABMを実行したい”というお客様が増えたように思います。ABMでの成功事例が増えてきたことから、徐々に有効性が理解され始め、戦略の一手として広がってきたように感じます。

■ ABMにおける課題は何か?

ABMが徐々に浸透し始めたのに合わせ、日々お問い合わせをいただくようになりました。
しかし、お客様は口をそろえて以下のように仰ることが多いです。

  • ABMを組織で実行しているが、なかなか受注に至らない
  • 営業代行会社にABMを任せているが、受注率が低い

今この記事を見ている方の中でも、同じように感じている方がいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、私はこういったお言葉を聞くたびにいつも疑問に思います。

ABMの受注率を正しく計測していますか?
本当に営業代行会社のみの要因で受注率が低いのでしょうか?

そこで、私が考えるABMの受注率の目線を共有させてください。

■ ABMにおける受注率の目安は?

前提条件

前提条件がそろわないと受注率の目線がおかしくなるため、以下を条件として設定させてください。

  • 商材:BtoB向け商材
  • ターゲット :従業員数 1,000名以上
  • 受注単価:500万~1000万円(1契約での受注金額)
  • リードタイム:6ヶ月~12ヶ月

※ 注意

一般的に、受注単価が低い商材はもっと受注率を上げられると思ってください。
検討するレイヤーや階層構造、登場人物がそもそも減少するため、受注難易度は低くなります。

受注率の目安

前提条件がそろったうえで、目安についてお話ししていきます。
以下は当社の実際の計測データです。

  • 最低ライン = 取り組み6ヶ月以内(顧客解像度がまだ浅い状態)
  • 通常ライン = 取り組み6-12ヶ月(顧客解像度が徐々に高まってきた状態)
  • 目指すべきライン = 取り組み12ヶ月以降(顧客解像度が高まっている状態)

初回商談→2回目商談(案件化)率

2回目商談→受注率

受注率

最低ライン

25%

20%

5%

通常ライン

30%

25%

8%

目指すべきライン

35%

33%

12%

※ 2回目商談=案件化(企業によっては”ヨミ”などとも呼ばれる)
※ 受注率=初回商談からの受注率

いかがでしょうか?
我々も、当初はかなり苦戦するなか、どうすれば受注率が引き上がるのか?を試し続けました。

もちろん商材によって異なりますが、いわゆる大手企業との商談での受注率としては高い数字だと思っています。リードタイムも長く複雑なプロセスである中で、受注率を高めてきました。

では、試行錯誤しながら、何を実行したのか?いくつか要素がありますので、共有していきます。

■ ABMの受注率を構成する要素

いよいよ本題です。以下3点が大テーマです。

① ターゲティング精度の問題

ターゲットは「N1(実在する個人)」まで絞り込む

私の感覚ですが、受注率があがらない要因はほぼこの点といっても過言ではありません。
多くの企業が以下のような状態に陥っています。

  • 狙う対象業界・企業数が広すぎ、顧客解像度が低くなってしまう
  • どの業界業種・マーケットで自社が勝ちやすいかが明確でない

最初に言いますが、ABMのポイントは、「絞ること」です。
絞るとは、「N1(Aさん)」までターゲットペルソナを設定しきることです。

「自社の商材のベストターゲットどんな人?」という問いに対して、答えられますか?
答えられないのであれば、改善余地しかありません。

また、ABMは「狙い撃ち」です。
狙い撃ちをするからこそ、ターゲットのN1(Aさん)に絞ることで、

  • この人は何に困っているだろう?
  • どんな組織状態だろう?
  • どんなミッションを担っているかな?
  • どんな理想を掲げているかな?

まで考えやすくなります。そうすることで訴求内容が大きく変わり、メッセージを尖らせることができるのです。
これで、獲得率も受注率も上がります。

このように、「絞ること」というのが大事なのです。


ではどんなイメージなのか? 当社と同じく商材を営業代行サービスとして、一例を挙げてみます(あくまで、本記事用のサンプルです)。参考にされてみてください。

<比較>

観点

ターゲットを絞れていない(受注率低)

ターゲットを絞れている(受注率高)

企業ペルソナ (誰に)

特になし

大手シンクタンク。
特に、既存事業の拡張または新規事業においてソフトウェア開発および販売を推進する部門を有する。

ターゲット定義

大手企業(従業員数1,000名以上)

大手企業(従業員数1,000名以上)

業界・業種

コンサルティング業界

大手シンクタンク・コンサルファーム

担当部門(ペルソナ)

営業・マーケティング部門

営業部門長の意志決定権者

課題仮説

「営業成果を上げたい」程度の漠然とした課題

これまでの既存事業と異なるビジネスモデルであり、新規リード獲得が必要。
既存事業のコネクションは活用できるが、ターゲット部門のコネクションがなく、横部門の開拓が急務。一方でナレッジが不足。

自社の「現在地」に最適な企業とレイヤーを見極める

こちらは、自社ソリューションで狙うべき顧客が、予算・課題の成熟度が合わない層へのアプローチになってしまっているケースです。稀に発生します。

例えば、エンタープライズ向け価格で商品展開をしているにも関わらず、中小企業向けにリーチしてしまっている例や、まだまだ市場で利用者が少なく、成熟しきっていないようなプロダクト販売において、担当者レイヤー向けにリーチをしているような例など様々です。以下に補足します。

成熟しきっていない市場での新プロダクト販売のケース

この手のケースはさまざまな意見がありますが、トップアプローチが有効かと思います。持論ではありますが、世の中でスタンダードになっていないソリューションは経営レイヤーなどのトップからリーチしないと推進されません。

例えば、当社のグループ企業でもリファレンスチェック領域のプロダクトを展開していますが、世の中の大半が活用していますでしょうか?まだまだスタンダードではないはずです。

リファレンスチェックとは、採用面接時に前職評価をアンケートで取り採用のミスマッチを減らすソリューションです。このようなこれからスタンダードを目指すようなソリューションにおいて、現場に近い担当者にリーチをした場合、一部の推進力のある方は進めてはくれるでしょう。

一方で、大半のお客様は「良いのはわかるんだけども…」で止まってしまい、受注率は低下します。社内にて、前例がないものを検討することは、とても難しいことなのです。

この場合は、部門長・役員以上など、一定採用のミスマッチが影響する事業や会社としてのリスクがわかる方にリーチすることをお勧めします。(もちろん、簡単ではありません)

エンタープライズ向け商材を中小企業向けにリーチしているケース

この手のケースは、商品売価&価値が、対象セグメントにフィットしているか? という視点で、見ていかねばなりません。「そんなはずはないだろう」と思われるかもしれませんが、様々なお客様にお会いする中で、「流石に売れなくないか?」と思う瞬間が、稀にあります。

逆に言うと、改善することでクリティカルに事業が加速する可能性もあります。

例えば、我々がまさに事業当初に失敗したことがあります。
営業代行業界のサービス費用の相場は、ざっくり以下です。

  1. 低価格×サービス品質△ : 月額10~30万円
  2. 中価格×サービス品質〇 : 月額31~50万円
  3. 高価格×サービス品質◎ : 月額51~100万円

それぞれ、料金感が異なるがゆえに、提供されるサービスの品質(クオリティ)や関与の度合いが異なります。

これらの中で、当社では【3】の領域で、サービス展開を行っていました。その中で、ある時、国内で最も企業数の多い、[中小零細規模]の顧客群の攻略を戦略として掲げました。【3】のサービスのまま攻める決定をしたことがあります。

結果としては、悲惨でした。受注率は昨対の半分以下に減少。全く購買されないわけではありませんでしたが、中小零細といっても従業員数規模は0~30名程度。年商も2桁億円にいくかどうかの市場群です。

どんなに素晴らしいサービスを思想として掲げても、料金面がどうしても合いませんでした。このように、商品・サービスによって[どうしても合わない市場]は存在するのです。

② リード基準(商談の質の入口)

最低限の商談獲得品質を定義する

ここで言う、リード基準とは、商談獲得の品質を指します。インサイドセールスはKPIとしてアポ数を置くことがほとんどですが、アポ数ばかりに固執しすぎると以下のような事案が増えます。

  • 「話を聞いただけ」
  • 「興味なし」
  • 「時間をくれと言われたからとりあえず来た」

など、商談設定を重視してしまうがゆえに、Needs(ニーズ)が著しく低いアポが増えてしまいがち。これは、KPIを商談獲得数、アポ数を追い続けると起きる現象です。

常に何のためにアポを追っているのか? 立ち戻る必要があります。

また、アポ基準が満たない商談はどれだけ強いトップセールスがいても受注はできない。野球と同じです。強いバッターがいても、ボールばかり投げられてはホームランは打てません。

一方で、ABMとは、「狙ったキーマンからリードを獲得しよう」という施策です。Needs(ニーズ)が著しく低いアポはNGですが、Needs(ニーズ)が低いアポは私としてはどんどん設定して良いと思っています。

以下私なりの最低基準の定義イメージです。(BANTで例えます)

▼ABMの商談設定基準

Budget(予算)

特になし

Authority(決裁権)

狙いたい部門・役職レイヤー以上であること

Needs(必要性)

最低限、商談認識はもっている状態

Timeframe(導入時期)

特になし

ABMは、狙ったキーマンと商談をするところからがスタート地点です。
そのため、狙った人と商談できるのであれば、極論なんでもよいと思っています。

エンタープライズ領域のリード獲得が安定しない理由によくあるのは、商談化条件にあれこれ制約をつけているケースです。
もちろん、Needsの箇所は、最低限という認識ではありますが、質的に求めすぎないことをお勧めします。

ニーズがなくとも、強いバッターをつけて、頑張って打つことが重要だと思っています。

③ 商談品質

初回商談の目的を「必ず次に繋げること」に置く

そして、受注率が上がらない要因のうち、ターゲティングの精度に次いで多いのが、商談の品質そのものです。
具体的には、新規商談において、課題ヒアリング、プレゼン、クロージングまでのプロセスのいずれかが欠落してしまうケースです。

冒頭で紹介した通り、ABMとは「狙った企業・キーマンへの狙い撃ち」です。そのため、如何なる手段を使っても、そのキーマンに出会うことを行うわけです。とすると、インバウンドリードのように、顕在化されたニーズに対する商談とは異なる進め方をする必要があることはご理解いただけるかと思います。

ABM経由での商談では、狙ったキーマンが「何の時間?」「どんな提案をされるのかな?」と身構えた状態で始めることも少なくありません。そんな時に以下のような進め方をしてしまっていませんか?

領域

NG例

顧客の心情

ヒアリング

課題はなんですか?/ありますか?と聞いてしまうケース

え……いきなり何?

ヒアリング

顧客の部門、部署、日々のミッション、取り組みなどを一切聞かず、ヒアリングしないケース

全く理解していないと思うけど、提案できるの?

プレゼン

会社説明、サービス説明(デモ含む)で40分以上長々と説明しているケース

……で?

うちにとって何がメリットになるの?

クロージング

「使ってみたいか?」と、キーマンの本音、ネック把握をしていないケース

(あんまり聞いてこないんだ……)

クロージング

ネクストアクションは「資料送りますね」で終わっているケース

……ありがとうございます。(多分見ないけど)

ご安心ください。
弊社でも、上記同様のアクションが起きておりました。

そこから大きく変更し、徐々に改善に至っています。商談品質はABMにおいて、大きく受注率に影響します。全て紹介することは難しいので、別の記事で記載をしようと思いますが、以下弊社で取り組んだポイントです。

エンタープライズのキーマンは常日頃から忙しいのです。営業も何度も受けています。だからこそ、1回の商談で即決するわけもなく、商談工程において、それぞれ工夫が必要になってくるわけです。あくまで実際取り組んだポイントです。

重要ポイント

補足

1

初回商談のゴールを定義する

初回は徹底的に相手の理解に注力し、説明・提案はラフで留め、2回目は商談獲得をゴールに商談設計に変更。
自社を理解しないまま、進められる商談ほど苦痛なことはありません。
初回商談では、「徹底したヒアリング」「簡易ラフ提案」の設計に根本から変更。

2

事例説明の解像度向上

結局お客さんが知りたいのは「で、どんな成果あげられるの?」でしかありません。
そのため、形式的な事例説明ではなく、個社に絞った解像度の高い説明ができるようブラッシュアップ。
加えて、ターゲットを意図的に絞り、事例解像度向上。

3

徹底的に顧客理解をする

ヒアリングでは、単に顧客の課題ではなく、キーマンの部門の役割、ミッション理解、日々の仕事内容、現状の取り組み把握の理解など。
「相手と同じ立場になって考えられること」をテーマに組織のヒアリングの割合を大きく増やしました。

4

優位性の把握の徹底

商談終了20分前には、必ず「自社サービスを使ってみたいか?」を聞くプロセスを2回の徹底(濁される点も踏まえ、あえて2回)。
出てきた懸念点に対して、次回の商談テーマを設計し、ネクストアクションに繋げる動きを実行。

5

ネクストアクションの徹底

商談終了15分前には、必ず「次回・誰が・何をするか?」を明確に握る動きを実施。
①の通り、初回商談では「2回目商談獲得」をゴールに置いているため、基本的には再商談の日程調整までその場で実行することを徹底。

6

御礼メールでNA・議事録を必ず送付

⑤の強化文脈にもなるが、⑤で話した内容をまとめ、必ず送付する癖を組織文化として醸成。
エビデンスとして送付することで一定の効力があり、顧客と疎遠にならない動きに繋がる。

などなど。長くなるので詳細までは割愛しますが、ABM商談に置いて、商談品質は必ず求められます。
個人的には、ここが無しでは前に進められないと思っていただいたほうが良いと思っています。

ABMにおいては、商談品質が大きく受注率に影響します。
ぜひ自社の商談のあり方を今一度見直す機会にしてみてください。

担当者は必ず「専任化」する

こちらは責任者の皆様にぜひお伝えしたいです。 ABM経路の商談で、対応者をバラバラにアサインしていたりしませんか?リスクしかないのでやめておきましょう。
ABMは顧客解像度が高い人ほど、事例解像度の高い個社説明、顧客の課題の引き出しの応用が利くものです。(上述通り)

また、営業担当者とISとの連携も必須になります。ISもできるだけ専任化しましょう。
例えば、商談のふとした時にこのようなことが聞けることがあります。

  • △△の役割って○○部が主導するらしいよ
  • ○○部って■■に困ってるらしいよ
  • ○○部って●●の役割らしいよ

このような細かな情報はとても大切です。これらがあるだけでISは仮説を立てられます。
そうすると、アポ獲得率が向上することは想像に容易いですよね。

ABMは「キーマンの狙い撃ち」ですから、情報が命な訳です。営業担当、ISともに情報蓄積と密な連携が求められるなかで、まずは専任体制で情報を集約していく方が成果に繋がりやすいです。

まとめ

以上です。ABM成功のヒントになりましたでしょうか?

上記は、実際に当社が取り組み、受注率を2倍以上に伸ばすことに繋がった秘訣です。なかなか受注に繋がらない……とABMを諦めかけている方がいらっしゃったら、ぜひこのポイントを実践いただければと思います。

改めてですが、以下、ポイントのおさらいです。

① ターゲティング精度の問題

ターゲットは「N1(実在する個人)」まで絞り込む
自社の「現在地」に最適な企業とレイヤーを見極める

② リード基準(商談の質の入口)

最低限の商談獲得品質を定義する

③ 商談品質

初回商談の目的を「必ず次に繋げること」に置く
担当者は必ず「専任化」する

上記を意識してみてください。特に力を入れて欲しいのは①③です。
これさえうまくいけば必ずABMの受注率は飛躍します。

もし「うちだとどうしたらいいの?」などあれば、ぜひご一緒に考えさせてください!
Xfacebookもやっていますので気軽に遠慮なく、ご相談ください!

長文でしたが見ていただき、ありがとうございました!

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