エンタープライズセールスにおける
長期的な関係構築と適切なタイミング

“エンタープライズセールス”が注目されるようになって久しく、多くの企業で導入が推進されていることと思います。一方で、エンタープライズ企業に対するアプローチが早期に実を結ぶかというと、決してそんなに甘くはありません。

多くの営業担当者が短期的な数字に追われる中、成功を収めるためには長期的な視点での関係構築が不可欠となります。案件化まで1年以上かかることも珍しくないエンタープライズセールスでは、「待つ力」と継続的な関係維持が成否を分けます。

本記事では、私自身がエンタープライズセールスとして日々従事するなかで会得した、短期的な成果主義から脱却し、長期的な価値創造を目指す営業戦略についてご紹介します。

長崎 健吾
エンSX株式会社 営業責任者

2023年エン・ジャパン株式会社へ中途入社。SX事業部に配属され、FS初期メンバーとして従事し、2024年から営業責任者へ。
現在はFSチームのマネジメントと並行し、自身ではエンタープライズ領域を担当。

エンタープライズセールスの成功を左右するのは「何を売るか」ではなく「いつ売るか」

エンタープライズセールスにおいて多くの営業担当者が見過ごしがちなのは、提案の品質よりもマーケット参入の時期が圧倒的に重要だという現実です。どんなに素晴らしい提案でも、市場の準備が整わなければ成約には結びつきません。
これがエンタープライズセールスの厳しい現実です。

私は以前大手SIerに対して、およそ2年間アプローチし続けた経験があります。当初は「今は必要ない」と断られ続けていましたが、新事業の立ち上げという大きな変化が訪れた瞬間、同じ提案内容で即座に商談が進みました。提案の内容は大きく変わっておらず、変わったのは相手の状況だけでした。

好条件が揃っているだけでは事業は前進しません。市場環境の変化を敏感に察知し最適なタイミングで行動を起こす洞察力が不可欠です。エンタープライズ企業ほど予算承認のタイミングや施策の検討スキームが複雑であり、その流れを理解することが成功への第一歩となります。

タイミングを見極める要素

実際にタイミングを見極めるために、私はいくつかの要素を常にチェックしています。

1.市場環境の変化

まず、市場環境の変化です。業界全体の動向や規制の変化、技術革新などが企業の投資判断に大きく影響します。
例えばデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せた際、多くの企業が一斉にIT投資を拡大しました。こうした大きな潮流を読むことで提案の受け入れられやすさが格段に向上します。

2.組織内の優先順位

次に、組織内の優先順位の変化も見逃せません。企業の経営方針や戦略目標は年度ごとに変化し、今年は効率化が最優先でも来年は新規事業開発が重視される可能性があります。顧客企業の中期経営計画や決算説明資料を注意深く分析し、組織の関心事がどこにあるかを把握することが重要です。

さらに意思決定者の状況も常に変化しています。キーパーソンの立場や関心事も時間とともに変化し、新しく就任した役員は前任者とは異なる課題意識を持っている場合があります。また部署の統合や分割により決裁権限の所在が変わることもあります。

3.「機が熟す」瞬間

そして最も重要なのが、マーケットの「機が熟す」瞬間を捉えることです。
多くの営業担当者は自社の都合でアプローチのタイミングを決めがちですが、エンタープライズセールスで重要なのは顧客側の準備が整った瞬間を見極めることです。

この「準備が整った状態」とは、以下のような状況を指します 。

・現状の課題が深刻化し、放置できないレベルに達している
・予算確保の目処が立っている、または立ちそうな状況にある
・意思決定者が変化を求めており、新しい取り組みに前向きである
・競合他社の動向や業界の変化により、行動の必要性を感じている

これらの条件が揃った時こそが、提案を行う最適なタイミングなのです。そしてこのタイミングを逃さないために、中長期にわたり継続的な関係構築をする必要があります。
ここからは、関係構築において必要なマインドや方法をご紹介していきます。

「継続する意志」がエンタープライズセールスの命運を握る

エンタープライズセールスでは、成果が現れるまで諦めずに取り組み続ける精神力が求められます。この粘り強さを持たない人は正直なところ実績を築くのは難しいでしょう。

受注まで1年以上の時間を要することは日常茶飯事で、中には2年、3年という長期間を要する案件も珍しくありません。そのため「すぐに結果が見えない」という理由で方向転換してしまうのは極めて勿体ないことです。

私自身も何度も予算編成のタイミングを待ち続け、ようやく商談のテーブルに着いたときにはすでに競合他社が優位に立っていた経験が山ほどあります。でも継続的な関係維持により培った信頼関係が最終的に逆転勝利につながったこともたくさんありました。

こうした長期戦を乗り切るには、大きな成果を一度に求めるのではなく、関係者との信頼関係構築や課題の理解深化、組織内での認知度向上などの小さな前進を確実に積み重ねていくことが大切です。

関係維持の具体的方法

核心は、マイナスの印象を与えずコミュニケーションチャネルを維持し続けることです。組織の人材は流動的で、転職や昇格、部門移動が頻繁に発生します。今日は限定的な権限しか持たない一般社員でも明日は重要な決定権を握る幹部職になる可能性があります。

私が担当していた案件で印象的だったのは、当初は窓口担当者だった方が2年後に部長に昇進し、その立場の変化によって一気に商談が進んだことです。その方との関係を継続していなければこの機会は他社に奪われていたでしょう。

過去に「案件化しなかった」と思われた人脈が、その人の立場変化により突然重要なビジネスチャンスへと変貌することは決して珍しいことではありません。エンタープライズセールスの経験を重ねるとこのような場面に数多く直面することになります。

効果的な関係維持にはいくつかの活動が特に有効だと感じています。
例えば、

・ 定期的な情報提供:月1回のメール配信や四半期に一度の訪問を心がけています。
  内容は売り込みではなく純粋に相手にとって有益な情報提供に徹することがポイントです 。
・ 業界レポートや関連ニュースの定期的な共有
・ セミナーや勉強会への招待
・ 他社の成功事例や失敗事例の情報提供
・ 人事異動の際の適切なフォローアップ
・ 年末年始や決算期などの節目でのコミュニケーション

などです。

月1回の情報提供メールに対して「ありがとうございます」という返信をもらえるようになる、担当者が気軽に相談してくれるようになる、こうした些細な変化も実は大きな前進なのです。商談が進まない期間でも、定期的な情報提供や業界トレンドの共有を通じて関係者との接点を維持し続けることが重要です。

また、直接の商談相手以外にも、業界のキーパーソンや社内の他部署との関係を構築し多角的なアプローチルートを確保することも欠かせません。例えば情報システム部門の担当者と良好な関係を築いておくことで、経営層の意向や予算編成の動向をいち早く察知できることがあります。

ただしこれらの関係維持活動も根本的な想いがなければ形骸化してしまいます。長期間にわたって継続するためには、前段でお伝えした、継続する意志・より深いレベルでのモチベーションが必要です。

エンタープライズセールスの魅力

顧客の心理メカニズムを深く洞察し、現場の最前線で企業課題の解決に貢献できその成功体験を最初に味わえる。これがエンタープライズセールスの本質的な魅力です。

市場の最前線情報

顧客との直接対話を通じて市場の変化や新たなニーズをいち早く察知することができこの情報は自社の商品開発や戦略策定にも活用できる貴重な資産となります。
私は顧客との会話で得た情報を社内に共有し、それが新プランの開発につながったことがあります。

課題解決の実感

自分の提案により顧客の業務が改善され従業員の働き方が向上する様子を間近で見ることができます。これは他の職種では得難い直接的な貢献実感です。導入後に「おかげで生産性が二倍になりました」と言われた時の喜びは何物にも代えがたいものがあります。

人的ネットワークの構築

様々な業界や企業の意思決定者と関係を築くことでキャリア全体を通じて活用できる貴重な人脈を形成でき転職時や独立時に過去の顧客が新たなビジネスパートナーになることも珍しくありません。

まとめ:長期的視点で真の価値を創造する

エンタープライズセールスの成功には、短期的な成果を求める姿勢ではなく長期的な視点と継続的な努力が不可欠です。適切なタイミングの見極めや粘り強い関係構築、そして社会貢献への強い使命感。これらの要素が組み合わさることで真の成果を生み出すことができるのです。

市場環境が急速に変化する現代において、エンタープライズセールスの重要性はますます高まっています。単なる商品販売ではなく顧客の課題解決パートナーとして、そして社会変革の推進者として、その価値を発揮していくことが求められているのです。

私は3年間エンタープライズセールスに携わってきましたが、この仕事の醍醐味は成約の瞬間ではなく、顧客の課題が解決されその結果として社会がより良い方向に変化していく過程を見届けることができる点にあります。

短期的な数字に追われがちな営業の世界において、エンタープライズセールスは長期的な価値創造を追求できる数少ない分野です。その責任の重さと同時に得られる満足感も格別です。

これからもこの信念を胸に真の価値創造に取り組んでいきたいと思います。
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