エンタープライズセールスの成功を左右するのは「何を売るか」ではなく「いつ売るか」
エンタープライズセールスにおいて多くの営業担当者が見過ごしがちなのは、提案の品質よりもマーケット参入の時期が圧倒的に重要だという現実です。どんなに素晴らしい提案でも、市場の準備が整わなければ成約には結びつきません。
これがエンタープライズセールスの厳しい現実です。
私は以前大手SIerに対して、およそ2年間アプローチし続けた経験があります。当初は「今は必要ない」と断られ続けていましたが、新事業の立ち上げという大きな変化が訪れた瞬間、同じ提案内容で即座に商談が進みました。提案の内容は大きく変わっておらず、変わったのは相手の状況だけでした。
好条件が揃っているだけでは事業は前進しません。市場環境の変化を敏感に察知し最適なタイミングで行動を起こす洞察力が不可欠です。エンタープライズ企業ほど予算承認のタイミングや施策の検討スキームが複雑であり、その流れを理解することが成功への第一歩となります。
タイミングを見極める要素
実際にタイミングを見極めるために、私はいくつかの要素を常にチェックしています。
1.市場環境の変化
まず、市場環境の変化です。業界全体の動向や規制の変化、技術革新などが企業の投資判断に大きく影響します。
例えばデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せた際、多くの企業が一斉にIT投資を拡大しました。こうした大きな潮流を読むことで提案の受け入れられやすさが格段に向上します。
2.組織内の優先順位
次に、組織内の優先順位の変化も見逃せません。企業の経営方針や戦略目標は年度ごとに変化し、今年は効率化が最優先でも来年は新規事業開発が重視される可能性があります。顧客企業の中期経営計画や決算説明資料を注意深く分析し、組織の関心事がどこにあるかを把握することが重要です。
さらに意思決定者の状況も常に変化しています。キーパーソンの立場や関心事も時間とともに変化し、新しく就任した役員は前任者とは異なる課題意識を持っている場合があります。また部署の統合や分割により決裁権限の所在が変わることもあります。
3.「機が熟す」瞬間
そして最も重要なのが、マーケットの「機が熟す」瞬間を捉えることです。
多くの営業担当者は自社の都合でアプローチのタイミングを決めがちですが、エンタープライズセールスで重要なのは顧客側の準備が整った瞬間を見極めることです。
この「準備が整った状態」とは、以下のような状況を指します 。
・現状の課題が深刻化し、放置できないレベルに達している
・予算確保の目処が立っている、または立ちそうな状況にある
・意思決定者が変化を求めており、新しい取り組みに前向きである
・競合他社の動向や業界の変化により、行動の必要性を感じている
これらの条件が揃った時こそが、提案を行う最適なタイミングなのです。そしてこのタイミングを逃さないために、中長期にわたり継続的な関係構築をする必要があります。
ここからは、関係構築において必要なマインドや方法をご紹介していきます。